日本の長所を知る指揮官とは思えない采配
[国際親善試合]日本 0-2 アメリカ/9月10日/ロウアードットコム・フィールド
中2日の2戦目でスタメン総入れ替えや、後半の4バック挑戦の構想そのものは悪くなかった。だがワールドカップ本大会が近づくこのタイミングで試みるなら、もう少し現実的で周到な選択が必要だった。
そもそも代表チームの活動とは、当該国籍保持者による最適解を追求していくべきものだ。もちろん交代数に限りがあるワールドカップ本大会では、難しいやり繰りを迫られ、一部の選手が本職ではないポジションでプレーしなければならないこともあるだろう。
だがいくらCBに故障者が連鎖したとはいえ、アメリカ戦のメンバー構成には無理があった。
まず長友佑都の3バック左での起用は悪いジョークだ。本来なら故障で不参加だった安藤智哉が、荒木隼人のどちらかの脇でプレーしていたのかもしれないし、確かに長友と対峙するアレックス・センデハスは167センチと小柄だった。
しかし、もし森保一監督が、この選択をE-1選手権ではなくワールドカップ本番でもあり得ると考えているなら、あまりに大志からかけ離れている。また、同じことが本来SBの関根大輝にも当てはまる。特に関根の場合は、後半4バックでのCBまで任されたので一層、混迷は深まった。
そして、さらに状況を悪化させたのが、4バック変更に際しての長友から瀬古歩夢の交代だ。長友は前半で故障をした可能性があるから、それは誤算だったのかもしれない。しかし4バック変更後もわざわざCBを左SBに据える発想は、とても日本サッカー界の伝統的な長所を知悉(ちしつ)する指揮官によるものとは思えず、まして追いかける展開にはそぐわなかった。
中2日の2戦目でスタメン総入れ替えや、後半の4バック挑戦の構想そのものは悪くなかった。だがワールドカップ本大会が近づくこのタイミングで試みるなら、もう少し現実的で周到な選択が必要だった。
そもそも代表チームの活動とは、当該国籍保持者による最適解を追求していくべきものだ。もちろん交代数に限りがあるワールドカップ本大会では、難しいやり繰りを迫られ、一部の選手が本職ではないポジションでプレーしなければならないこともあるだろう。
だがいくらCBに故障者が連鎖したとはいえ、アメリカ戦のメンバー構成には無理があった。
まず長友佑都の3バック左での起用は悪いジョークだ。本来なら故障で不参加だった安藤智哉が、荒木隼人のどちらかの脇でプレーしていたのかもしれないし、確かに長友と対峙するアレックス・センデハスは167センチと小柄だった。
しかし、もし森保一監督が、この選択をE-1選手権ではなくワールドカップ本番でもあり得ると考えているなら、あまりに大志からかけ離れている。また、同じことが本来SBの関根大輝にも当てはまる。特に関根の場合は、後半4バックでのCBまで任されたので一層、混迷は深まった。
そして、さらに状況を悪化させたのが、4バック変更に際しての長友から瀬古歩夢の交代だ。長友は前半で故障をした可能性があるから、それは誤算だったのかもしれない。しかし4バック変更後もわざわざCBを左SBに据える発想は、とても日本サッカー界の伝統的な長所を知悉(ちしつ)する指揮官によるものとは思えず、まして追いかける展開にはそぐわなかった。
この夜の試合では、アメリカのほうがずっと“日本らしく”組織的に丁寧な崩しで主導権を握り続けた。筆者カウントでは、ペナルティエリアへの侵入回数がアメリカの20回に対し、日本は7回。逆にクロスの数は日本が25-6(本)で圧倒した。
ショートパスを繋ぎ、全体で押し上げながら最終的にはクリスチャン・プリシックに象徴される個性を活かしたアメリカに比べ、日本は最終的に外からの浮き球に託す頻度が高かった。ましてこうした展開なのに、左SBを託したのが右利きのCBの瀬古である。右サイドのほうも、ブレーメンでのデビュー戦で、攻撃面では圧倒的な存在感を示した菅原由勢がプレーしたのは、わずか18分間に止まった。
4バックで攻撃的に戦うにはレフティの左SBが不可欠だ。ほんの少しだけ過去に遡っても、長友-内田篤人に代表されるようにSBは日本の長所だった。
これまで森保監督は、ユーティリティを優先し、CBも兼務する伊藤洋輝や町田浩樹を優先してきた。だがJ1直近の28節でも4バックで戦ったチームは9チームあり、8人の日本人レフティがプレーしている。あるいはスウェーデンでプレーする19歳の小杉啓太という選択肢もある。
それでも毎回左SB適任者として選ばれ続けるのが、所属クラブでは右でプレーすることが多く、レギュラーとも言い切れない長友のみという現実は、あまりに正当性、公平性を欠く。
ターンオーバーは、前回カタール・ワールドカップでも苦い経験をした(ドイツに勝利した後に、コスタリカに敗戦)わけだが、今回も酷い失敗に終わった。アメリカは2得点以外にも5度の決定機を作ったので、GK大迫敬介の好守がなければ十分に大敗の可能性もあった。
客観的に日本はまだワールドカップの優勝候補ではないし、強豪国に食い下がるにはピッチに立つ全員が最大限に特徴を発揮することが条件になる。オプションを試すのは良いが、せっかく招集された選手たちが、不慣れなポジションで不完全燃焼に終わるのは悲劇でしかない。
ピッチ上の複数の選手たちが最適ではないポジションでプレーしても、ライバルから白星を拾えると見るなら、それは大きな勘違いだと思う。
文●加部究(スポーツライター)
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4バックで攻撃的に戦うにはレフティの左SBが不可欠だ。ほんの少しだけ過去に遡っても、長友-内田篤人に代表されるようにSBは日本の長所だった。
これまで森保監督は、ユーティリティを優先し、CBも兼務する伊藤洋輝や町田浩樹を優先してきた。だがJ1直近の28節でも4バックで戦ったチームは9チームあり、8人の日本人レフティがプレーしている。あるいはスウェーデンでプレーする19歳の小杉啓太という選択肢もある。
それでも毎回左SB適任者として選ばれ続けるのが、所属クラブでは右でプレーすることが多く、レギュラーとも言い切れない長友のみという現実は、あまりに正当性、公平性を欠く。
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客観的に日本はまだワールドカップの優勝候補ではないし、強豪国に食い下がるにはピッチに立つ全員が最大限に特徴を発揮することが条件になる。オプションを試すのは良いが、せっかく招集された選手たちが、不慣れなポジションで不完全燃焼に終わるのは悲劇でしかない。
ピッチ上の複数の選手たちが最適ではないポジションでプレーしても、ライバルから白星を拾えると見るなら、それは大きな勘違いだと思う。
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