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心を揺さぶった試合終了間際のDF谷口栄斗の猛スプリント。25年ぶりに川崎を下した一戦に見えたヴェルディの真骨頂

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2025年06月30日

深澤大輝のJ1初ゴールで勝利

勝利を喜ぶ谷口と深澤。谷口は試合途中からキャプテンマークも巻いた。CKからのゴールはニアで谷口が頭ですらし、深澤が決める形だった。写真:福冨倖希

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[J1第22節]東京V 1-0 川崎/6月29日/味の素スタジアム

 東京Vが走りに走り、闘いに闘い、勇気を持ってボールをつなぎ、意地で掴み取ったような勝利だった。

 川崎とホームで対戦した一戦、3-4-2-1の布陣で、最前線にMF登録の新井悠太を起用して機動力を活かした東京Vは、キャプテンマークを巻いたボランチの森田晃樹を筆頭にこの一戦に懸ける想いを実直に表現。32分にCKからウイングバックの深澤大輝が奪ったJ1初ゴールを決勝点にし、川崎に勝ち切った。

 リーグ戦で川崎を下すのは2000年以来、25年ぶりだという。もっとも城福浩監督が「そうですかとしか言いようがないですが」と口にし、「僕が就任した直後に天皇杯でフロンターレさんに当たって(勝って)いるので、そんなに悪い印象はなかったです」振り返ったように、川崎戦だから特別に気合いを見せたということではないのだろう。

 前節はアウェーでC大阪に1-2で敗れ「C大阪戦が終わったあとサポーターの想いというものを直接聞いていたりもしたので、今日は負けられないという想いが、サポーターの想いも含めて全員が持っていたと思います」(城福監督)という。さらに指揮官は川崎戦を前にチームに呼びかけたこともあったという。

「自分たちがなぜ今苦しくなっているのかというのは、選手の経験値や選手層を(理由として)取り上げるのであれば、もう僕がいないほうがいいんですよ。ヴェルディがJ1からいなくなったほうがいいんですよ。

 そうではないところで、我々が何ゆえに今苦しんでいるのかというのを強く共有しました。最後にロッカーアウトをする時も、我々の去年の戦い方を参考にしていると言ってくれた他のチームがいて、そのチームがほとばしるような勝利の執念を見せて昨日勝っているんですよね。みんなに言いました。我々が模範とされた去年があって、今の我々はどうなんだと。胸を張って模範とされるようなベースを示しているのかというところは今週用意をしてきましたが、昨日のJリーグのゲームのなかでも刺激を受けましたし、選手にそれは伝えました。

 もうひとつは点を取った深澤大輝というのは、つい1、2か月前まではエキストラ(追加練習のメンバー)で、ものすごく悔しい想いをして、でもひざまづきながら練習のあとエキストラのメンバーのなかでも一番やっていた選手だと思います。そういう選手が点を取ったこと。もうひとつは、(途中出場のFW)染野(唯月)は本来であればもっと得点を取るためにエネルギーを割きたいと思っているでしょうが、今日の彼の30分間の守備というのはエクセレントです。だからこそ2回の決定機が彼のところに来たんですよね。これが大事なことで、我々が愚直に何をやり続ければ、結果であったり自分のところにボールが転がってきたりということになるのかを選手がしっかり感じてくれたらいいなと。そう思うようなゲームでした」

 その東京Vが“模範とされたチーム”とは今季、初のJ1昇格を果たし、前日にアウェーで首位の鹿島を破った岡山だという。

【動画】東京Vの深澤の決勝弾 
 また勝利への渇望は、試合終了間際、3バックの左で先発した谷口栄斗の姿にも見えた。自陣深い位置でボールをクリアした谷口は、それがルーズボールになると見るや、体力的に最も厳しい時間に猛スプリントでボールを追いかけたのだ。

 本人は冷静に「あれは行っちゃいけない。危なかったので行くべきではなかった」と語る。守り切るという面では最終ラインに穴を開けるべきではなかったのだろう。落ち着いた戦い方は大切だ。しかし、谷口のあの姿に心を熱くされたのは私だけではないだろう。チームを奮い立たせる姿勢は戦力が限られるチームにとっては何より必要に映る。

 改めて谷口を筆頭にこの日の東京Vの選手たちはよく走り、よく闘い、ボールをつなぐことを怖がらなかった。

 試合後、城福監督も胸を張った。

「何試合か勝っていなかったので、サポーターにも本当に悔しい思いをさせていました。彼らと一緒に試合のあとに喜び合えるのは、我々にとってもいかに大事なことかというのを今日再確認できた、そんな瞬間でした。

 ゲームに関しては勇気をもってボールをつなぐところをトライさせたかったです。取られたあとのリカバリーパワーは我々がつなごうとするからこそ発揮されるのであって、怖がって蹴ったところで本来のリカバリーパワーは出せないので、ここはもう我々らしくやろうと。その代わり、出し切ってしっかりバトンを渡していこうと確認しました。今日出た選手はバトンを渡す側も受ける側も全員が戦ってくれたと思います。

 フィニッシュの精度というべきかタイミング。タイミングも含めて精度ですね。スルーパスを通しきれなくて決定機の前で阻止されたというところも含めて、そこはポジティブな反省点ではありますが、辛抱強く守りながら後半も決定機は作れたので、今日のゲームは本当に我々のバトンの受け渡しと内容も含めて、トータルでポジティブに反省、振り返ることができるのではないかなと思います。

 チームが苦しくなった時には、もちろん我々の攻撃の工夫は日進月歩で歩んでいかなければいけないのでそれはやっていますが、苦しい時ほど立ち返るべきは我々のベースなんですよね。それを選手がよく理解してくれていて、ミスをしないようにプレーするのではなくて、我々のベースを全面的に押し出していくと。

 そのベースのひとつにバトンの受け渡しがあるので、そこを悔いのないように、チームとして悔いの残らないようにやってほしいということは、今週のチーム作りのなかで、あるいはメンバーをセレクトしていくなかで、メンバーのセレクトがひとつのメッセージなので、そういう想いも(選手は)受け取ってくれたと感じますし、繰り返しになりますが、どれだけ悔しい想いをしながら応援してくれているかというサポーターの想いも選手は感じていたので、彼らの想いも含めて背中を押してくれたのかなと思います」

 谷口も「今日のプレースタイルが僕たちですし、それが出た。もっとやらなくちゃいけないですけど、今日は最低限かなと。これを基準に。次に勝たないと意味がない」と口にする。

 6月ながら暑い日が続き、今年の夏も選手たちは体力面との戦いにもなるだろう。

 そのなかで東京Vが川崎との一戦を経て、どんなサッカーを見せるかは楽しみだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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