ヨナスは「最高傑作」と言えるのかもしれない
日本サッカー界にとって「歴史的」と言える出来事が起きたのは今年3月。ブンデスリーガ第25節のバイエルン対ボーフム戦で、日本人指導者の“教え子対決”が実現したのだ。ピッチで対峙したのはヨナス・ウルビヒ(バイエルン)とティモ・ホルン(ボーフム)で、現在ベルギー2部のオイペンでGKコーチを務める田口哲雄氏が、ケルンのアカデミー時代に手塩にかけて育て上げたGKである。
その田口氏が進境著しいウルビヒを中心に、教え子対決を振り返る。
──―◆―――◆―――
脈々と受け継がれてきた名GKの系譜が途絶えてしまうのではないか。近年、ドイツでそう心配する声が聞かれる。ブンデスリーガを見渡しても、正GKを務める若手ドイツ人はフライブルクのノア・アトゥボル(22歳)が唯一で、やはり心細いところだ。マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン、ベルント・レノ、ティモ・ホルンが台頭した10年前とは明らかに違う。ところが、この状況を一変させるような出来事が起こった。
チャンピオンズリーグのラウンド・オブ16第1レグのレバークーゼン戦で、21歳のヨナス・ウルビヒが試合中に負傷したマヌエル・ノイアーの代役に抜擢されたのだ。今年1月、ケルンからバイエルンに移籍したヨナスは、私がケルンユースで指導した最後の教え子であり、もしかしたら「最高傑作」と言えるのかもしれない。
【動画】「教え子対決」のハイライト
その田口氏が進境著しいウルビヒを中心に、教え子対決を振り返る。
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脈々と受け継がれてきた名GKの系譜が途絶えてしまうのではないか。近年、ドイツでそう心配する声が聞かれる。ブンデスリーガを見渡しても、正GKを務める若手ドイツ人はフライブルクのノア・アトゥボル(22歳)が唯一で、やはり心細いところだ。マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン、ベルント・レノ、ティモ・ホルンが台頭した10年前とは明らかに違う。ところが、この状況を一変させるような出来事が起こった。
チャンピオンズリーグのラウンド・オブ16第1レグのレバークーゼン戦で、21歳のヨナス・ウルビヒが試合中に負傷したマヌエル・ノイアーの代役に抜擢されたのだ。今年1月、ケルンからバイエルンに移籍したヨナスは、私がケルンユースで指導した最後の教え子であり、もしかしたら「最高傑作」と言えるのかもしれない。
【動画】「教え子対決」のハイライト
ヨナスはそもそも育成組織に加入した当初から、他とは違う雰囲気を醸し出していた。9歳にしてGKとしての動きが様になっていたのだ。言語化するのは難しいが、教える前から自然とGK然とした振る舞いができていて、技術的にも非常に優れていた。
同じ2003年生まれのフローリアン・ヴィルツ(現レバークーゼン)と二枚看板を形成して順調に成長していたが、ひとつだけ気がかりな点があった。小柄だったのだ。ドイツでもGKの身長は話題になりやすいが、育成段階では尚更だ。両親の背丈が大きかったこと、そして身長以外の要素が非常に優れていたので取り立てて問題視されることはなかったが、クラブ内で期待が膨らみ過ぎている印象を受けた。
だが、本人は周囲の喧騒をよそにプロまで駆け上がり、2部クラブへのレンタル期間を経て、今シーズンからケルンの正GKを務めていた。不運だったのは開幕からチーム状態が上がらず、その皺寄せがヨナスに及び、11節からベンチへ降格してしまったこと。それでも国内での高い評価は揺らがず、ノイアーの後継者として白羽の矢が立ったのだ。
同じ2003年生まれのフローリアン・ヴィルツ(現レバークーゼン)と二枚看板を形成して順調に成長していたが、ひとつだけ気がかりな点があった。小柄だったのだ。ドイツでもGKの身長は話題になりやすいが、育成段階では尚更だ。両親の背丈が大きかったこと、そして身長以外の要素が非常に優れていたので取り立てて問題視されることはなかったが、クラブ内で期待が膨らみ過ぎている印象を受けた。
だが、本人は周囲の喧騒をよそにプロまで駆け上がり、2部クラブへのレンタル期間を経て、今シーズンからケルンの正GKを務めていた。不運だったのは開幕からチーム状態が上がらず、その皺寄せがヨナスに及び、11節からベンチへ降格してしまったこと。それでも国内での高い評価は揺らがず、ノイアーの後継者として白羽の矢が立ったのだ。