移籍市場を激変させた「TransferRoom」の価値。Jリーグもシーズン移行の2026年に導入か?

カテゴリ:Jリーグ

元川悦子

2025年04月25日

リクルーティング、アウトプレースメント、ネットワーキング

トランスファールームの有用性を語るヴィッタル氏(左)と檜山氏(右)。写真:元川悦子

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「日本が強くなるためには、日本人選手が50人、100人と欧州へ行くことが大事。それが実現すれば、自ずと日本代表もワールドカップで上位に行けるようになる」

 こう語ったのは、2002年日韓W杯で日本代表を初の16強へと導いたフィリップ・トルシエ氏だ。あれから23年の月日が経過し、フランス人指揮官の言葉通り、数十人規模の日本人選手が欧州でプレーするようになり、日本代表もほぼ欧州組という時代が訪れた。

 それとともに選手の移籍環境も大きく変化。テクノロジーを使ったスカウティングが一般化している。目下、複数のJクラブ強化担当者が活用しているのが、映像配信システムの「Wyscout(ワイスカウト)」と、選手17万人・監督7000人の移籍情報をチェックできる「TransferRoom(トランスファールーム)」。特に後者はリアルに人と会うことができなかったコロナ禍に急速に拡大。今では世界850クラブとFIFAライセンスを持つエージェント500社が活用しているという。

「これまでのサッカー移籍市場は、特定のネットワークに依存する形が中心でした。AというクラブがBという選手に興味を持っても、B選手の契約年数やレンタル移籍の可否、年俸や移籍金といったデータを持っているのは所属先の強化担当とエージェントだけという状況も少なくありませんでした。

 有名選手になればなるほどエージェント以外の仲介人も絡んでくるため、獲得を希望するクラブ側が法外な移籍金を支払わされるケースも少なくなかった。それだけ透明性に欠け、偏ったネットワークのディール(移籍交渉)が多かったんです。

 けれども、トランスファールームがあれば選手の個人情報が瞬時に把握できますし、年俸や移籍金、5年後の価値予測といったデータも入手できる。その選手に近い条件の選手が誰なのか、いくらなのかといった情報も得られますし、実際に当該クラブやエージェントにコンタクトできる。すぐに話がまとまれば、コスパ・タイパ的にもいいでしょう。それを可能にしたのが、我々のシステムなんです」と、同社日本・韓国・東南アジア担当のエグゼクティブ・ディレクターを務める檜山竜太郎氏は言う。

 トランスファールームには、主に①リクルーティング(選手発掘)、②アウトプレースメント(放出された選手の移籍先探し)、③ネットワーキング(クラブ同士・関係者同士の関係作り)の3つの機能がある。
 
 ①のリクルーティングは言葉通り、クラブが選手を探し、絞り込む時に使うことが多い。「25歳以下のFWで移籍金が50万ユーロ(8000万円)以下」といったデータを入力すると、条件を満たした国内外の選手が瞬時に出てくるのだから、クラブ側はこの情報のもと、候補者を徹底調査して現所属先と交渉すればいい。エージェントが持ってきた話をうのみにして失敗するような事態は回避できるのだ。

 日本代表のキャプテン遠藤航(リバプール)の情報をチェックしてみると、32歳という年齢とこれまでのキャリア、身長・体重、走行距離やマックススピードなどのフィジカルデータが出てくるばかりでなく、過去5年間の怪我の履歴、今後5年間の移籍期待値と金額まで調べることができるのだ。

「我々の会社には15人規模のビッグデータチームがあり、様々な情報を収集して個人データをインプットしています。指揮官も7000人分が入っていますから、成績不振で監督を解任したクラブが新たな候補者を探す時にも役立つでしょう。

 トランスファールームを活用したディールもこれまで7500件に上っていますが、今後はより一層、増えていくでしょう。『移籍に投じるコストが削減され、選手を動かすのに費やす時間も効率化できた』という声も世界各国のクラブ関係者からいただいていて、合理化の一助にもなっていると考えています」と、ロンドン本社のスチュワート・ヴィッタル・セールスダイレクターも自信をのぞかせた。

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