十分に魅せられるなかで独自のスタンスを貫く
2月某日。アトレチコ鈴鹿クラブの三浦知良を取材。この日は別メニュー調整で、ランニング時は険しい表情を見せていたレジェンドは、ボールを使ったトレーニングでは一変。満面の笑みを浮かべていた。
58歳になっても現役を続け、「サッカーが好き」と目を輝かせるカズ。その時にふと思った。3年前にスパイクを脱ぎ、現在は横浜FCのコーチを努める中村俊輔も、シンプルにボールを蹴ったり、サッカーをプレーするのが好きなのだろうか。
「カズさんのそれじゃないけど、楽しいからね。サッカーの楽しさは忘れないっていうか、単純に楽しいから」
俊輔コーチの“サッカー愛”もまた不変。指導者として今季で3年目。練習後にはスタッフ同士でボール回しに興ずる。「今日は負けたわー」と嬉しそうに話す。
トレーニングでは、自身が実際にプレーする割合は少しずつ減ってきている。「ボールに触らなくても、段々とウズウズしなくなってきた」という。一方で「感覚はなくならないけど、あんまり薄めたくない」とも。
たとえばGK練習では、いまだに鋭いシュートを放つ。十分に“魅せる”こともできるなかで、独自のスタンスを貫く。
「朝に、ペナとペナの間を走ったりするんだよ。苦しいんだけど、そういう苦しい思いをしてやらないと、選手に『いけ!』って言えないのかなって」
誰かに言われたわけでもない。「自分の中で勝手に」決めたことだ。「自分も苦しさを味わおうと思って。選手と同じ秒数に入れないけど、自分も走って、こらしめて(笑)。そうすれば『やろう! やろう!』っていうのも選手に伝わるかなと。一応、頑張ってやってるよ(笑)」。
【画像】サポーターが創り出す圧巻の光景で選手を後押し!Jリーグコレオグラフィー特集!
58歳になっても現役を続け、「サッカーが好き」と目を輝かせるカズ。その時にふと思った。3年前にスパイクを脱ぎ、現在は横浜FCのコーチを努める中村俊輔も、シンプルにボールを蹴ったり、サッカーをプレーするのが好きなのだろうか。
「カズさんのそれじゃないけど、楽しいからね。サッカーの楽しさは忘れないっていうか、単純に楽しいから」
俊輔コーチの“サッカー愛”もまた不変。指導者として今季で3年目。練習後にはスタッフ同士でボール回しに興ずる。「今日は負けたわー」と嬉しそうに話す。
トレーニングでは、自身が実際にプレーする割合は少しずつ減ってきている。「ボールに触らなくても、段々とウズウズしなくなってきた」という。一方で「感覚はなくならないけど、あんまり薄めたくない」とも。
たとえばGK練習では、いまだに鋭いシュートを放つ。十分に“魅せる”こともできるなかで、独自のスタンスを貫く。
「朝に、ペナとペナの間を走ったりするんだよ。苦しいんだけど、そういう苦しい思いをしてやらないと、選手に『いけ!』って言えないのかなって」
誰かに言われたわけでもない。「自分の中で勝手に」決めたことだ。「自分も苦しさを味わおうと思って。選手と同じ秒数に入れないけど、自分も走って、こらしめて(笑)。そうすれば『やろう! やろう!』っていうのも選手に伝わるかなと。一応、頑張ってやってるよ(笑)」。
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何よりも、今もグラウンドの中にいることに幸せを感じている。コーチとして“現場”に立ち、走ったり、ボールを蹴ることもできる。セカンドキャリアで誰もができることではないから、感謝もしている。
両腕をグルグルと回して、前にタタタッ、後ろにタタタッと短いダッシュ。現役時代によく見たアップだ。それを伝えると「変わらないね。なんか自分が落ちたなって分かるから」と明かす。「衰えているなって。それが面白いじゃん」。
え? 面白い? 聞き間違えではないようだ。俊輔コーチは続ける。
「上に行くことばかりを考えてやってきて、30代後半、40代はキープすることで精一杯。そこから伸びたりはなかなかないから。10発中9発とか精度は上がるかもしれないけど。でも、強度とかはやっぱり下がっていく」
そして選手ではない現在、「それを楽しむ。楽しいよ。うわ、俺もう、蹴れなくなってきたなって」。
日の丸の10番を長く背負い、日本サッカー界で一時代を築いた男のストーリー。凡人には到底、理解できない。頂点を目ざし、辿り着いた。だが、登った山はいずれ降りなければならない。その道程を、俊輔コーチはゆっくりと噛みしめているのだろう。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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【記事】「大谷翔平って何であんなに凄いの?」中村俊輔の素朴な疑問。指導者としてスーパースター育成にも思考を巡らせる
両腕をグルグルと回して、前にタタタッ、後ろにタタタッと短いダッシュ。現役時代によく見たアップだ。それを伝えると「変わらないね。なんか自分が落ちたなって分かるから」と明かす。「衰えているなって。それが面白いじゃん」。
え? 面白い? 聞き間違えではないようだ。俊輔コーチは続ける。
「上に行くことばかりを考えてやってきて、30代後半、40代はキープすることで精一杯。そこから伸びたりはなかなかないから。10発中9発とか精度は上がるかもしれないけど。でも、強度とかはやっぱり下がっていく」
そして選手ではない現在、「それを楽しむ。楽しいよ。うわ、俺もう、蹴れなくなってきたなって」。
日の丸の10番を長く背負い、日本サッカー界で一時代を築いた男のストーリー。凡人には到底、理解できない。頂点を目ざし、辿り着いた。だが、登った山はいずれ降りなければならない。その道程を、俊輔コーチはゆっくりと噛みしめているのだろう。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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