【EURO 今日は何の日】6月24日「自ら勝利を決めた“素手”の守護神(04年)」

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年06月24日

PK戦が7人目を迎えた時、リカルドが突然主役の座に就いた。

グローブをしないGKとは非常に奇異に見えるものだが、これがヴァッセルの心理状態にも影響を与えたか……リカルドは思惑通りにキックを止めた。 (C) Getty Images

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そしてその直後、観客のどよめきのなかでラストキッカーを務め、絶対にGKの手の届かない位置に強烈なシュートを突き刺した。 (C) Getty Images

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 EURO2004のポルトガルは、最悪のスタートを切った。
 
 開催国として、戦前の評価は出場16か国で最低だったギリシャ相手に快勝を飾り、勢いを得て以降の戦いに臨むはずが、予想以上にチーム力を上げていた相手に1-2の敗北を喫したのだ。
 
 勢いどころか、いきなりグループステージ敗退の危機すら囁かれることとなり、追い詰められたポルトガルだったが、2年前の世界王者(ブラジル)の将、ルイス・フェリペ・スコラーリの下で何とか持ち直し、ロシア、スペインを倒して首位で決勝トーナメント進出を果たした。
 
 6月24日に行なわれたノックアウトステージの初戦、つまり準々決勝でのポルトガルの相手はイングランド。試合は開始3分、マイケル・オーウェンのゴールで早くも動く。ポルトガルのミスによるものだった。
 
 しかし、これで目が覚めた開催国は、ここから攻勢に立つ。両サイドから、ルイス・フィーゴ、クリスチアーノ・ロナウドがドリブルで仕掛けてチャンスを生み出していった。
 
 それでも肝心のゴールが生まれないのは、全体的なポジショニングの拙さが原因であり、せっかく両翼がボールを送っても、中央で待ち受ける味方の数があまりに少なすぎた。
 
 そのうち、徐々にポルトガルのリズムが崩れ、逆にイングランドはカウンターから再三相手ゴールに迫った。
 
 試合は後半に入り、75分、スコラーリ監督はチャンスメイクで貢献していたフィーゴを下げてエルデル・ポスチガを投入、さらにルイ・コスタを送り出して総攻撃を仕掛けた。
 
 このギャンブルともいうべき采配は当たり、83分、こちらも交代出場のシモン・サブローサのクロスをポスチガが決めて、ポルトガルは追い付いた。
 
 シルバーゴール(延長前半終了の時点で点差があれば試合終了)方式の延長戦では、前半は両者無得点に終わったが、後半開始から5分、ルイ・コスタがドリブルからのミドルを決めて、ポルトガルが逆転する。
 
 一方、守備一辺倒だったイングランドは最後の力を振り絞って反撃に出、110分、デイビッド・ベッカムのCKから、ジョン・テリーが落としたボールをフランク・ランパードが押し込んで、執念で追い付いてみせた。
 
 こうして、試合はこの大会初のPK戦の突入。先攻のイングランドは、セットプレーのスペシャリストであるベッカムが1番手で登場し、バランスを崩して大きく枠を外す。一方のポルトガルは、3人目のルイ・コスタの蹴ったボールがクロスバーを越えた。
 
 サドンデスに入り、6人目のポスチガが技巧的なチップキックを決めた後、ポルトガルのGKリカルドが突然、キーパーグローブを脱ぎ捨て、素手でゴールマウスに立つ。そして、イングランドの7人目、ダリウス・ヴァッセルのキックに対し、見事な反応を見せた。
 
 後に彼は、グローブを脱いだ理由を、キッカーの気をそらし、集中力を削ぐため、と語っている。
 
 殊勲のリカルドは、そのままボールを手に、今後はキッカーとしてペナルティスポットに立つ。そしてゴール左隅に突き刺し、自ら勝利を決めた。
 
 ポルトガルは激闘の末に準決勝へ進出。この後、オランダにも勝利して決勝進出を果たすが、開幕戦の屈辱を晴らすためのギリシャ戦は、彼らにさらなる悪夢を見させるものとなってしまう……。
 
◎6月24日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1984年フランス大会
準決勝
スペイン 1(5PK4)1 デンマーク
 
◇2000年ベルギー・オランダ大会
準々決勝
ポルトガル 2-トルコ
イタリア 2-ルーマニア
 
◇2004年ポルトガル大会
準々決勝
ポルトガル 2(6PK5)2 イングランド
 
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
準々決勝
イタリア 0(4PK2)0 イングランド
 
※日付は全て現地時間
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