［J１第１節］湘南 １－０ 鹿島／２月15日／レモンガススタジアム平塚

「みんなが特別な想いを持っていた。素晴らしい形で終われたかなと」

　会見の最後にこう語ったのは、湘南の山口智監督だ。“クラブの功労者と笑顔でお別れを”と、選手・スタッフとサポーターが一丸となった一戦だった。

　湘南ベルマーレは２月15日、J１開幕節で鹿島アントラーズと対戦し、１－０で勝利した。

　決勝ゴールの福田翔生が「開幕戦の勝利はチームの方向性を示す」と語るように、鹿島戦の勝利は今季を見据えるうえで重要なものだと言えるが、この日の湘南には、もうひとつ絶対に負けられない理由があった。湘南に29年間在籍した広報の遠藤さちえ氏が、鹿島戦をもってクラブを離れるのだ。
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　遠藤氏は1996年に湘南（当時はベルマーレ平塚）へ入社して以降、98年の親会社撤退をはじめ、多くの困難を乗り越えながら、湘南とクラブに関わるすべての人を支え続けた。

　山口監督は、そんな“名物広報”へ惜別の言葉を贈る。

「僕が監督になって苦労もあっただろうし、最も変化を感じてくれた人だと思う。それを信じてくれて、発信してくれたことで、自分も励まされた。退職は残念です。でも、それを背負って僕らは先に進まなければいけない。進んでいく姿勢を、僕らはピッチで見せていきたいです。（遠藤氏には）本当に、感謝しかない」

　別れを惜しむのは監督だけではない。試合後、多くの選手が遠藤氏の下へ駆けつけて感謝の言葉を伝えた。サポーターからは「29年間ありがとう。ベルマーレを、選手を愛し続けた遠藤さちえの未来に幸あれ」という横断幕が掲出され、“遠藤さちえコール”も贈られた。

　また、鹿島戦の取材に訪れた記者陣からも盛大な拍手と花束、感謝状が渡された。どんな立場の人とも分け隔てなく接し続けたからこそ、誰よりも愛される広報となったのだろう。

　なお、新広報には元Jリーガーの古林将太氏が着任。湘南の下部組織出身でクラブへの熱いハートを持つ33歳が、長年愛された“名物広報”の想いを受け継いでいく。

取材・文●岩澤凪冴（サッカーダイジェスト編集部）

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