今回で最後となるシーズン前恒例のスーパーカップで、神戸と広島が対戦。広島がトルガイと荒木のゴールで２－０の完勝を収めた。

　広島は強かったね。上々の仕上がり具合。スキッベ体制４年目で、やろうとするサッカーも成熟している。まさに盤石の勝利。見ていて楽しかった。

　先発した新戦力のジャーメインや田中も良かった。目に見える結果は残せなかったけど、要所で良いプレーを見せていた。ジャーメインの鋭い裏への抜け出し、田中のペナ近くでのスルーパス。強力なオプションになりそうだ。

　目をひく選手はたくさんいたなかで、先制点を挙げたトルガイは抜群の存在感があった。プレーに余裕があるよね。良い意味で“頑張らない”というか。余計なことはしない。とにかくシンプル。でも即効性があって効果的。

　サッカーってこんなに簡単でいいんだって、改めて教えてくれるプレーヤーだ。イニエスタっぽいよね。トルガイのところにボールが渡ると、その場の“空気”が変わる感じ。わりとスピーディなJリーグで、トルガイのところでは他と違う時間が流れている。あの落ち着き、冷静さは絶妙なアクセントになっていると思う。
【動画】トルガイ！ 荒木！ 広島が神戸に２－０勝利！

　そのトルガイも凄いんだけど、やっぱり後ろの安定感が広島の強みなんじゃないかな。３バックの佐々木、荒木、塩谷。この３人は本当に頼もしい。目の前の敵をガツンと潰しに行く。球際で強いし、ビルドアップもスムーズだ。

　そしてキーパーの大迫。キックがさらに上手くなったような気がする。良いところに配球していたから、前の選手も楽だったと思うよ。後半の最初ほうのピンチではビッグセーブもあったしね。

　守備の４人が充実しているから、周りも活き活きと、アグレッシブに戦える。２点目は菅のコーナーから荒木がヘッドで押し込んだように、セットプレーも大きな武器になりそう。攻守両面で隙がない広島は、間違いなく今年のJ１で優勝候補の一角だよ。それが強く伝わってくるゲームだったね。

【著者プロフィール】
岩本輝雄（いわもと・てるお）／1972年５月２日、52歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ／平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

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