ジョアン・ラポルタの誇大妄想を象徴する、2021年の選挙キャンペーン期間中にサンティアゴ・ベルナベウ付近のマンションに飾られた「再び会えることを楽しみにしている」と書かれた巨大横断幕は、バルセロナを蝕む痛ましい現実によって悪夢と化している。

　ヨハン・クルイフはもういないし、リオネル・メッシは別れを告げる機会すら与えられなかった。ここ数日、その苦悩するバルサの話題の中心となっていたのがダニ・オルモだ。

　オルモは、ハンジ・フリック監督のコンセプトとアスルグラナの願望に重要な意味を与えるワールドクラスの選手だ。事の深刻さを物語るのは、そのチームに欠かせない選手のラ・リーガにおける登録を維持するための資金を調達できず、チームの足を引っ張ったのがクラブのトップたる会長だったことだ。
 

　イメージの低下は甚大だ。ラポルタ会長は自らの行動によって、貧しくても威厳とプライドを持ち続けること、評判を落とすことなく一定のマナーを守ること、クラブ創設以来、125年にわたって、紋章に刻み込まれた自然の摂理に忠実であることを忘れてしまったことを露呈した。

　オルモは同じ境遇にあったパウ・ビクトルとともに暫定的に選手登録されることが認められたが、ラポルタのやりたい放題ぶりとバルサと自分たちとの扱いの違いを目の当たりにした他のラ・リーガのクラブの不満を抑えるのは至難の業だ。

　確かなのは、ラポルタ会長の言葉にもはや信頼性はないことだ。持ち前のカリスマ性を武器に難題を乗り越えてきたが、それもスピーチの機会を失ってしまっては魅力がなくなる。貝になった今のラポルタには疑うことを知らないソシオを信じ込ませた立ち回りの上手さも宝の持ち腐れだ。

　ダニ・オルモの登録問題だけではない。メッシを引き留めることも、当初、公言していた昨年11月29日にカンプ・ノウに戻ることもできなかった。約束の不履行とその場しのぎの経営に嫌気が差してラポルタの元から去って行った幹部と執行役員の人数は20を超える。CEO（最高経営責任者）のポストは空位のままで、ビジネスプランは存在しない。頼みの綱は、仲介役を買って出るエージェントであり、彼らに支払う手数料だ。カンプ・ノウのオフィスでは、選手獲得ではなく、選手登録や抵当権の話ばかりが飛び交っている。

　この大混乱を招いた責任は、基準をころころ変えるラ・リーガや消極的な対応に終始する連盟、社会学的マドリディスモにあるといったいつもの言い訳は、バルサ伝統の被害者意識すら貶めるものだ。ラポルタの会長復任以来、いずれもバルサの無形資産である「クラブ以上の存在」のスローガン、独自のサッカーアイデンティティ、“エントルノ”と呼ばれるメディアやファンによる外圧が危機にさらされている。

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