６月10日（現地時間）に幕を開けるEURO2016。ルーマニアとのオープニングゲームに臨む開催国フランスは、優勝候補でもあり、多くの注目と期待を集めている。
 
　戦いの火蓋が切られる前に、32年前、同じ自国でのEUROの舞台で初のメジャーイベント制覇を果たした、偉大なる先達の回想、大会への展望、そして後輩へのエールをここにまとめた。
 
――◇――◇――
 
◇アラン・ジレス
　ボルドーで背番号10を背負った163センチの小柄な司令塔は、EURO84では「黄金の中盤」の一角としてミシェル・プラティニをサポートし、自らもチャンスを量産した。現マリ代表監督。
 
「1984、98（ワールドカップ）、2000年のような好結果を今回も残すことができると信じている。何より、地元でやれることは大きい。国民の熱狂と応援を背に受けて戦うメリットは、フランスしか持たないものなのだから。
 
　昨年のフランスは、あまり出来が良くなかったが、今年に入って非常に調子を上げている。若い選手たちが良いプレーをして自信をつけたことも大きい。アントワーヌ・グリエーズマンやポール・ポグバのような才能のある選手が今回、世界中の人々に強い印象を与えることを確信している。
 
　心配な点としては、84年大会の時はその２年前のスペインW杯で自信を掴み、00年大会には世界王者として大会に臨むなど、自信の裏打ちがあったが、今回のチームはその点が弱いような気がする。しかし、若くて優秀なフランスの選手たちは、ハンデを乗り越えてくれると信じている」（『Tribune de Geneve』より）
 
◇ルイ・フェルナンデス
「黄金の中盤」のなかでは、豊富な運動量を活かして好守にフル稼働。彼の存在があってこそ、プラティニ、ジレス、ジャン・ティガナは存分にその力を発揮できた。クラブではパリ・サンジェルマン、ラシン・パリ、カンヌでプレー。引退後は多くのクラブ、代表で監督を務め、先月、ギニア代表監督を辞した。
 
「欧州制覇を果たした84年のことで最も覚えているのは、国民の熱狂だ。あれが、チームを後押ししてくれたのは間違いない。我々に勝つ喜びを教えてくれたのは、彼らだったと言ってもいい。
 
　そして当時のチームには、偉大なプラティニ、ジレス、ティガナがいた。彼らとプレーするのは本当に楽しく、大きな喜びでもあった。特にプラティニは素晴らしく、常に自信に満ち溢れ、何かを成し遂げてやろうという強い野心を持っていた。
 
　今回のチームの監督であるディディエ・デシャンは、一貫性を持った良い監督だと思う。それに彼は選手として、W杯とEUROの両方を手に入れている。これは重要なことだ。
 
　フランスは間違いなく、優勝候補に入ると思う。国民の熱狂や応援をプレッシャーに感じるようなことさえなければ、快進撃を見せてくれるだろう。
 
　フランスの対抗馬となるのは、スペイン、ポルトガル、ベルギーだと見ている。ドイツは……、今のチームは２年前ほどのレベルにはないと思うのだが、果たしてどうだろうか。
 
　とにかく私は、フランス代表チームの冒険が美しいものとなることを心の底から願っている」（『be IN SPORTS』より）
 
◇マキシム・ボッシ
　攻撃的なチームの守備をまとめたが、彼自身もチャンスがあれば積極的に上がり、チャンスに絡んだ。CB、SBと、多くの役割をこなした。現役時代はナント、ラシン・パリに所属。現在はコメンテーターとして活動している。
 
「フランスは間違いなく優勝候補であり、開催国として大観衆の前でプレーできるのは大きなメリットとなるだろう。しかし、一方でそれがプレッシャーとなり、チームの足を引っ張ってしまう可能性も否めない。
 
　デシャン監督はできるだけ、チームの露出を抑えながら、選手たちに落ち着きを与え続けることが必要だろう。ピッチ上での戦いだけに集中できるように」（『EUROPE1』より）