「本当の話だから」

　岡野雅行氏が何度も強調する。かつて日本代表で共闘した城彰二氏のYouTubeチャンネルに出演し、高校時代の驚くべきエピソードを披露した。

　横浜出身の岡野氏は、高校は親戚の勧めで島根県の松江日本大高（現・立正大淞南高）に越境入学。当時は「全国の超エリートのヤンキーが集まる」高校だったという。

　サッカー部に入るつもりだったが、部員はまさかの１人。そんな状況でも岡野氏はめげずに部員を募集したら、20人以上が集まった。

　経験者はほとんどいないなかで、岡野氏が監督兼選手として奮起。いわゆる不良の先輩もいたが「ああいう人たちって、すげぇ根性あるから。（練習を）やってくれるわけよ」と岡野氏も期待していた。

　ただ、トレーニングばかりでは退屈なので練習試合を計画。なかなか相手が見つからず、ようやく決まった相手は「絵に描いたような不良校」だった。

「『クローズ』って映画があるじゃない？ 本当にあの映画と一緒。ガラスが割れている。こんな高校、本当にあるんだと思うぐらい」

　それでも試合ができる。岡野氏たちはみんなユニホームを着用していたが、相手の装いは違った。

「コロナの時代でもないのにマスクしててさ。みんな短ラン、ボンタン、長ランとか着ている人たちがずらーっと。で、パッと足もとを見たらスパイクは履いている。あ、サッカーはやりたいんだと」
【動画】“野人”岡野雅行の伝説。初めての練習試合で大乱闘！ヤンキーサッカー部のシンデレラストーリー

　もっとも、岡野氏は嫌な予感がしたという。それは的中した。キックオフと同時に...。

「うちの先輩がパパパパと走っていって、いきなり飛び蹴りをするわけですよ。そこから始まります。大乱闘」

　城氏が「キックオフでピーって鳴って、10秒したらもう試合終了みたいな感じ？」と聞けば、岡野氏は「10秒じゃない。ピーの瞬間」と答える。

　せっかくの練習試合でサッカーができなかった。岡野氏は学校に戻って大泣き。退学を考えていたら、翌日に呼び出された。先輩たちに叱られるかと思ったら、「悪かった」と全員に謝られたという。

　岡野氏の想いが伝わったのだろう。それからは部全体で熱心に練習に励み、それぞれが凄いスピードで上達していった。

　練習試合をやる相手が増え、監督も呼び寄せて、セレクションも実施。チームはどんどん強くなっていき、新人戦では島根県でベスト３の成績を残すまでに。これには城氏も「凄いね」と感心した。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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