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ミャンマー戦で局面を打開し続けたのは中村だけ。三笘との共存を探る必要も。全く工夫が見えてこなかったのは...

カテゴリ:日本代表

加部 究

2024年06月07日

森保一監督の“配慮の跡”

左サイドで果敢な仕掛けを見せ、ミャンマー戦の勝利に貢献した中村。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本代表は6月6日、北中米ワールドカップ・アジア2次予選でミャンマーと敵地ヤンゴンで対戦。5-0で完勝を収めた。

 辛うじて数字上は最終予選進出への可能性を残していたミャンマーだが、日本を攻略するための具体的な道筋はまったく描けていなかった。

 1トップのマウン・マウン・ルイン以外は、相手ボールになった途端に踵を返して自陣へ戻っていくのでプレッシングはほぼ皆無。日本は最終ラインの3人はもちろん、アンカーの守田英正までもが終始完全にフリーな状態でボールに触ることができた。

 一方で人が溢れる日本のファイナルサードでも相手を掴まえきれているわけでもなく、盛んに仕掛ける中村敬斗には2人が対応しても止められない。また守備時のバランス感覚も欠き、中村が先制点を挙げたシーンでは、ボールサイドに寄せ過ぎて左サイドに広大なスペースを提供してしまった。

 接触の度に倒れ込み、それに対しレフェリーも笛を鳴らして試合が止まる。それは主に欧州のトップシーンで戦う選手たちにとっては、もはや別の競技にさえ感じられたかもしれない。

 日本側では、中村と守田が最も汗を流し違いを演出した。中村はミャンマーというより、ポジションを争う三笘薫という高くそびえる山に挑んでいるようだった。

 総体的に人が動くより、少ないタッチでボールを動かし、ウォームアップのようなロンドを続ける展開となったが、このミャンマー相手でも数的不利なゴール近くで確実に目の前の相手を剥がして局面を打開し続けたのは中村だけだった。もちろんシュートの上手さも出色なので、今後指揮官は三笘との共存の可能性も探っていく必要がありそうだ。

 また開始早々に相手に突かれボールを失った守田は、以後圧倒的な読みと身体を張った守備で日本の途切れない攻勢を担保した。ミャンマーは、GKも含めて後方の選手たちの選択は大半が裏狙いのロングボールだったわけだが、それでも繋ごうとした数少ない機会は守田がことごとく分断した。
【動画】中村敬斗が止まらない!思わず声が出る鮮烈ゴラッソ
 森保一監督は、こうして守備の心配が要らないアウェー戦に妥当な戦術と人選で臨んだ。伊藤洋輝、橋岡大樹とサイズも備えたサイドアタッカー的な資質を持つDFを最終ラインに据え、特に伊藤はほかの2枚を残して前進し、攻撃の起点として機能した。

 鎌田大地が降りてくれば、旗手怜央が入れ替わりで上がる連係も含めて、前半は中村へと繋げて仕掛ける左サイドが明らかに主戦場となった。ただ、左半分で外へと流れていく構築を担うにはレフティの方が円滑になるので、後半は川村拓夢を送り込んでいる。せっかくの機会なので、川村もJリーグの日常で発揮しているミドルレンジからのシュートなど、個のアピールを試みても良かった。

 紆余曲折のシーズンを終えたばかりの鎌田には、決定機でポストを叩いたシュートも含めてイージーなミスも散見された。やはりトップリーグで戦う選手たちが、このタイミングでモチベーションと集中を保つのは至難の業だ。

 それも踏まえて、鈴木唯人のA代表デビュー、前田大然のウイングバック、板倉滉のボランチ起用などの実験には、個々がフレッシュな気持ちで臨めるように指揮官の配慮の跡が見て取れた。

 逆にこれだけ落差の大きな試合でも、全く工夫が見えてこなかったのがセットプレーである。9本のCKは、堂安律、旗手、菅原由勢、相馬勇紀が蹴り分けたわけだが、懸案事項に改善の兆しがない。

 選手たちの厳しい競争を強調する指揮官は、スタッフに対しても同様のスタンスで結果を求めていく必要がある。

取材・文●加部究(スポーツライター)

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