JFLから辿り着いたJ1での100試合。賛辞を贈るべき川崎・遠野大弥の努力と献身

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2024年05月12日

ゴミスの2ゴールを演出

J1での100試合出場を果たした遠野。さらなる成長を誓う。(C)J.LEAGUE

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[J1第13節]川崎 3-0 札幌/5月11日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 FW遠野大弥、25歳。

 J1・13節の札幌戦で記念すべきJ1通算100試合出場を達成した。

 高卒選手という経歴を見れば、遅いタイミングでの記録到達と言えるのかもしれない。しかし、彼が辿ってきた歩みを振り返れば、その道は稀有なものと称せるだろう。

 藤枝明誠高出身、166センチ・66キロのアタッカーは大学進学と悩みながら、高校卒業後、2017年に入団を決めたのがJFLのHonda FCであった。

 当時は社員として工場での仕事とサッカーを両立していたというが、コツコツと下地を築いていく。そして2019年、天皇杯でベスト8進出という躍進を果たしたチームで結果を残すと、川崎からのオファーを勝ち取ったのである。

 21歳で戦ったプロ1年目(2020年)は当時J2だった福岡にレンタル移籍し、チームトップの11ゴールを挙げるなどJ1昇格に貢献。

 そして、2021年から川崎で初のJ1の舞台に立ったのである。川崎での4シーズン目、25歳で迎えたJ1通算100試合である。

 その道のりを改めて振り返ってもらうと、「長かったようで、短いと言いますか」と噛みしめるような言葉が返ってきた。

 それでも笑顔も浮かべる。

「この100試合の大半はサブで出ることが多かったと思います。ただ、それがあって今がある。だからこそもっと積み重ねていきたいですね」
【動画】川崎×札幌のハイライト!!

札幌戦は子どもと入場し、記念撮影。忘れられない試合になったはず。写真:滝川敏之

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 攻撃自慢の川崎の前線と言えば、タレント揃い。それこそ4-3-3の基本システムでウイングやインサイドハーフを主に務めてきた遠野にとっては、三笘薫、旗手怜央、田中碧、家長昭博、マルシーニョら頼りになるチームメイトである反面、手強いライバルたちがいた。

 それでも攻守での献身性、自慢のミドル、そして真摯に練習に取り組む姿勢は鬼木達監督からも評価され、重用されてきた。

 今季もそうだ。新シーズンは主にインサイドハーフの一角を担い、脇坂泰斗、橘田健人と組みながら守備のスイッチや、フリーランなどで攻撃を活性化させる貴重な役を演じているのである。

 そして札幌戦では息の合う元フランス代表FWのバフェティンビ・ゴミスとのコンビネーションで魅せた。昨夏の加入後、なかなか結果を残せずにいたこのストライカーは待望の初得点を含むハットトリックを挙げたが、その2点をお膳立てしたのが遠野だった。

「自分は改めて“入っていく選手”。顔を挙げた瞬間に彼(ゴミス)は要求してくれますし、収めてくれ、パスを返してくれる。やっぱりすごい選手で、やりやすさを感じています」

 パス主体の川崎にあって、走って、相手の裏を取って、味方と局面を崩すことができる遠野の特長は欠かせないもので、加えて魅力はそれだけではない。

 札幌戦では、38歳のゴミスのプレーエリアがそれほど広くないなかで、前線からのチェイシングでも寄与。好守で鬼木監督からの起用の意図もしっかり認識している。

 この日は昨夏に授かった第一子となる長男を抱えて入場する記憶にも残るゲームになった。
 
「まったく泣いてなくて。ここはどこなんだろうと、変な顔をしていました(笑)」

 一瞬、父親の顔になった遠野の挑戦はこれからも続いていく。

 目指すのは「攻守に渡ってアグレッシブに自分の良さを出せる選手」だ。

 J1・100試合で9得点という結果には満足できないのだという。

 さらなる結果を求め、遠野はこれからも努力を重ね、真摯に挑んでいくことだろう。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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待望の初ゴールに称賛の声。川崎ゴミスの人間性が窺えるチームメイトたちの言葉
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