五輪代表チームにおいて、求められるストライカー像とは何か。

　U-23日本代表は今年４月、パリ五輪出場権が懸かるアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップへ挑む。アジアでの戦いでは、格上の日本に対して引いて守る相手が多いと予想されるが、そのなかで重要なのは、強固な守備ブロックをこじ開ける得点力のあるFWの存在だろう。

　U-23代表を率いる大岩剛監督は、FWのゴールへ向かう姿勢や選手個人の強みや能力を尊重しつつ、まずはベースとしてチームのタスクをしっかりと実行するべきであるとの考えを示す。

「フォワードの細谷（真大）だったら、あれだけの馬力や得点感覚があるし、藤尾翔太であれば収めたり、ウイングもできたりする器用なところがある。それぞれの特長は必ず認識して評価しています。

　ただ、私たちのチームタスク、これをやってくれないと周りの選手たちからの信頼を得られないよ、というところ。フォワードの前線からの守備は、我々の生命線だとよく言いますが、それがあって初めて全体のラインが上がったり、色んな相乗効果が生まれる。

　これはA代表の基準。（選手に）A代表の映像を見せて、『やっていることは一緒だよね。俺たちのチームでこれができなければ上でもできないでしょ？』というスタンスでチーム作りをしています」
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　大岩監督が発足当初から掲げているキーワード“Ａ代表経由パリ五輪行き”。細谷や鈴木彩艶、半田陸、川崎颯太らA代表招集を経験した選手も増えてきており、指揮官が選手たちに一貫して伝えてきた「A代表を基準に」の意識も着実にチームに浸透してきている。

　なかでも細谷は、昨年11月のワールドカップ・アジア２次予選から、コンスタントにA代表へ招集されているひとり。そんな22歳の“これぞストライカー”というプレーがあった。

　昨年12月９日に行なわれた川崎フロンターレ対柏レイソルの天皇杯決勝。０－０で突入したPK戦の末に川崎が勝利したこの試合の69分、味方のクリアボールに反応してDFの裏に抜け出した柏の細谷は、相手に後ろから激しくチャージされたが、倒れずに力強く持ち運んだ。

　結局、最後のボールタッチが大きくなってしまい、GKに止められてしまったが、大岩監督も評価する細谷の“馬力”が感じられたシーンだった。

　倒れていれば決定機阻止で相手にレッドカードが出て、数的優位の展開になっていてもおかしくはない場面。しかし細谷は倒れる選択はせず、ゴールを目ざした。

　このシーンについて大岩監督は、「あれが真大でしょ、という感じ。あの時に彼（細谷）はゴールをとれると判断して持っていったと思うし、フォワードのあるべき姿。間違いなくあれは行って正解ですよ」とチームのために懸命に前線でボールを追いつつ、ここぞで持ち味を発揮する細谷のストライカーとしての姿勢を称えた。

取材・文●手塚集斗（サッカーダイジェストWeb編集部）

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