「１-０なんて（フロンターレ）らしくない」
 
　開幕戦で前年王者の広島を下した中村憲剛は、試合後のミックスゾーンで開口一番発した言葉だ。ただし、それは決してネガティブな意味ではない。チームが新しいカラーを見せることができた、という想いを込めてだ。

マッチレポート｜広島 ０-１ 川崎​

【PHOTOハイライト】広島×川崎

　川崎と言えば、３年連続得点王の大久保嘉人を中心に、リーグ随一の攻撃力を武器とするチームだ。しかし、この日は勝利のベースに「守備」があった。２トップの大久保嘉人と小林悠が高い位置からチェイシングを行ない、中盤は中に絞って広島の司令塔・青山敏弘を徹底的にマーク。最終ラインは故障の武岡優斗に代わって先発に抜擢された奈良竜樹が、谷口彰悟とともに攻撃を撥ね返した。
 
　エースの大久保が「前（FW）はディフェンスがキツかったですよ。でも、広島に勝つためにはあのやり方しかない」と話せば、中村も「誰ひとり欠けることなく、しっかり守備に参加していた。アウェーでの開幕戦で、90分間最後まで集中を切らすことなくできたのは間違いなく収穫」と続き、守備への手応えを感じさせた。
 
　一方で、攻撃面でも意図を持って広島を翻弄した。大久保が中盤に降りて攻撃の起点となった前半から一転、広島がそれにアジャストして中を締め、ゲームは「我慢比べ」の展開となった。これまでの川崎なら、同様のシチュエーションで半ば強引に敵陣に攻め込み、逆にスペースを突かれて失点することが多かった。
 
　しかし、中村によれば16日間で５試合をこなす連戦下にある広島が「バテる」と想定し、守備でスタミナを浪費させるようペースを調整したという。
 
「５-４でブロックを敷いてくる以上、ハイテンポで崩すのは簡単じゃない。相手のシャドーとウイングバックが（スタミナ的に）辛そうだったので、スローテンポにして相手を帰陣させて、守備で上手く走らせようと。俺と（大島）僚太は比較的フリーでクサビを入れることもできたけど、ふたりで示し合わせて、焦れずに、愚直に続けることができた」