「静学から順大に行くことがどういうことかは分かっている」
圧巻の一撃だった。
0-0で迎えた34分、左サイドでボールを持った旗手怜央は、さらに左にポジションをとったMF藤川虎太朗に一度預けると、そのままゴール前に走り込む。藤川からリターンパスが届く瞬間、彼は一度後ろの状況を確認した。
「マーク、カバーを見て、全体を把握した」旗手は、ワンタッチで反転し前を向くと、この時点でプレスに来ていたふたりのDFを交わしていた。「もう前には1人しかいなかったので、『行ける』と確信した」と、再びワンフェイントではがすと、GKとの1対1を冷静な右足シュートでゴール右隅に沈め、チームに先制点をもたらした。
Jユースのトップクラスの逸材たちを相手に「余裕があった」と言ってのけるほどの視野の広さと判断スピード。彼の凄さはただドリブルが上手いだけでなく、しっかりと相手の状況を見てコースを決め、かつカバーリングに来た相手をも交わしてしまう技術とスピード、ボディーバランスにある。
降りしきる雨の影響でスリッピーなピッチコンディションにもかかわらず、しっかりと踏み込んで、安定した回転軸と瞬発力で繰り出したターン。ワンタッチで背後に潜り込むスピード、横からの当たりに対してもぶれない体幹。そして滑らかなボールコントロールと落ち着いたコントロールシュート。チームの勝利にこそ繋がらなかったが、まさにその持ち味をフルに発揮した一撃だった。
技巧派軍団・静岡学園において、旗手は上手さとパワーを兼ね揃えた異質の存在だった。卒業後はプロではなく、順天堂大に進むが、この進路は彼にとって「かなりの重責を担っている」ものだった。
順天堂大と言えば、多くの偉大な先輩たちが進んだ場所で、今季から川崎フロンターレに入団した長谷川竜也、一昨年に入学した米田隼也、昨年入学した名古新太郎は、いずれも1年時から順大の主軸としてプレーし、将来を期待される存在となっている。つまり順天堂大学は静学のエース級が進む、『出世ロード』なのだ。
「静学から順天堂大に行くことがどういうことかは分かっているつもりです。1年から試合に出ることはもちろん、活躍をしないといけない。プレッシャーはありますけど、それも味わいたくて(順天堂大に)行くので、楽しみでもあります」
決意を固めた新天地での戦いを前に、まずは21人から18人に絞られる日本高校選抜のメンバーに入り、世界を経験するという目の前の目標がある。
「まだ経験したことがないヨーロッパ遠征に参加することで、どんなところが通用するのか試してみたい」
選手権こそ静岡県予選準決勝で敗れ出場できなかったが、日本高校選抜の欧州遠征でまたひとつレベルアップできる機会を得た。このチャンスを活かし、そのまま先輩たちが築いた『出世ロード』に乗ってステップアップしていくつもりだ。旗手はさらにその決意を強くした。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
0-0で迎えた34分、左サイドでボールを持った旗手怜央は、さらに左にポジションをとったMF藤川虎太朗に一度預けると、そのままゴール前に走り込む。藤川からリターンパスが届く瞬間、彼は一度後ろの状況を確認した。
「マーク、カバーを見て、全体を把握した」旗手は、ワンタッチで反転し前を向くと、この時点でプレスに来ていたふたりのDFを交わしていた。「もう前には1人しかいなかったので、『行ける』と確信した」と、再びワンフェイントではがすと、GKとの1対1を冷静な右足シュートでゴール右隅に沈め、チームに先制点をもたらした。
Jユースのトップクラスの逸材たちを相手に「余裕があった」と言ってのけるほどの視野の広さと判断スピード。彼の凄さはただドリブルが上手いだけでなく、しっかりと相手の状況を見てコースを決め、かつカバーリングに来た相手をも交わしてしまう技術とスピード、ボディーバランスにある。
降りしきる雨の影響でスリッピーなピッチコンディションにもかかわらず、しっかりと踏み込んで、安定した回転軸と瞬発力で繰り出したターン。ワンタッチで背後に潜り込むスピード、横からの当たりに対してもぶれない体幹。そして滑らかなボールコントロールと落ち着いたコントロールシュート。チームの勝利にこそ繋がらなかったが、まさにその持ち味をフルに発揮した一撃だった。
技巧派軍団・静岡学園において、旗手は上手さとパワーを兼ね揃えた異質の存在だった。卒業後はプロではなく、順天堂大に進むが、この進路は彼にとって「かなりの重責を担っている」ものだった。
順天堂大と言えば、多くの偉大な先輩たちが進んだ場所で、今季から川崎フロンターレに入団した長谷川竜也、一昨年に入学した米田隼也、昨年入学した名古新太郎は、いずれも1年時から順大の主軸としてプレーし、将来を期待される存在となっている。つまり順天堂大学は静学のエース級が進む、『出世ロード』なのだ。
「静学から順天堂大に行くことがどういうことかは分かっているつもりです。1年から試合に出ることはもちろん、活躍をしないといけない。プレッシャーはありますけど、それも味わいたくて(順天堂大に)行くので、楽しみでもあります」
決意を固めた新天地での戦いを前に、まずは21人から18人に絞られる日本高校選抜のメンバーに入り、世界を経験するという目の前の目標がある。
「まだ経験したことがないヨーロッパ遠征に参加することで、どんなところが通用するのか試してみたい」
選手権こそ静岡県予選準決勝で敗れ出場できなかったが、日本高校選抜の欧州遠征でまたひとつレベルアップできる機会を得た。このチャンスを活かし、そのまま先輩たちが築いた『出世ロード』に乗ってステップアップしていくつもりだ。旗手はさらにその決意を強くした。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)