中国市場は本当にスーパーだ。野心と資金的な裏付けに、クオリティーまで伴ってきた。その“爆買い”ぶりはヨーロッパを震撼させるに十分だ。
 
　ジェルビーニョ（ローマ→河北華夏幸福）、フレディ・グアリン（インテル→上海申花）、ラミレス（チェルシー→江蘇蘇寧）、フレディ・モンテーロ（スポルティング→天津泰達）、ステファン・エムビア（トラブゾンスポル→河北華夏幸福）などに続いて、ヨーロッパの冬の移籍市場が閉まった２日後の２月３日には、ジャクソン・マルティネスまでもが中国に渡った。
 
　アジア王者の広州恒大は移籍金4200万ユーロ（約59億円）、４年契約の年俸1250万ユーロ（約17億5000万円）を提示。さすがにアトレティコ・マドリーもこれには抗えず、ディエゴ・シメオネ監督は「引き留められなかったのは私の責任」と語った。
 
　とはいえ、たった７か月で、しかもほとんど役に立たなかった選手から700万ユーロ（約９億8000万円）もの売買差益を得たのだから（昨夏にポルトから3500万ユーロで獲得）、アトレティコはほくそ笑んでいるに違いない。

【2016年欧州冬のメルカート】新天地を求めた主な選手まとめ

　ちなみに、この移籍を裏で仕切ったのはジョルジュ・メンデスとジョセフ・リー。メンデスはクリスチアーノ・ロナウドやジョゼ・モウリーニョ、ハメス・ロドリゲスなどの大物を顧客に抱え、さらに他の代理人や投資ファンドとの連携で数々のビッグディールを成立させてきた、言わずと知れた現代フットボール随一のスーパーエージェントだ。
 
　一方のリーは、かつてダリオ・コンカ（現上海上港）やマルチェロ・リッピ監督を広州恒大に送り込み、今冬も様々なディールに関わるなど、「中国のメンデス」と呼ばれる大物代理人である。
 
　このジャクソンの取引は、今冬最高額の移籍になるかと思われた。しかし、２月５日には、リバプールやチェルシーも狙っていたシャフタールのアレックス・ティシェイラを、江蘇蘇寧が5000万ユーロ（約70億円）の巨額で引き抜いた。
 
　中国はとめどなくスーパーだ。
 
文：ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳：片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO（ジャンルカ・ディ・マルツィオ）／1974年３月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年１月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。各クラブの会長やスポーツディレクターはもちろん、代理人からスカウトまで膨大な関係者と緊密なネットワークを持ち、しかもしっかり裏が取れるまでは決して情報を出さない。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。