昨年度の全日本大学サッカー選手権大会（インカレ）で快進撃を見せ、準優勝に輝いた新潟医療福祉大。その時のメンバーが多く残る今年は、総理大臣杯初戦を９－０という圧倒的なスコアで勝利を飾って、悲願の全国制覇に向けて好発進を切った。

　常葉大との試合で先制点を含む４ゴールと大暴れしたFW田中翔太は、昨年度のインカレ準決勝で決勝弾、桐蔭横浜大との決勝でもゴールを決めるなど、全５試合中４試合で計４ゴールと、３年生エースストライカーとして活躍した。

　最高学年を迎えた今年、北信越大学サッカーリーグ１部では７ゴールと得点ランキングトップを走る。常葉大戦では11分にこぼれ球に鋭く反応すると、「相手が前にいましたし、下を狙ったらゴールキーパーに触られると思ったので思い切って上を狙いました」と、目の覚めるような強烈な一撃をゴールに突き刺して、チームのオープニングゴールを挙げた。２－０で迎えた30分に相手が一人退場して数的優位に立つと、４点目、６点目、７点目を叩き込んで前述した通り圧巻の４ゴール。大きなインパクトを残した。

　しかし、まだ田中の進路は決まっていない。今年に入ってからJ２とJ３の合計６クラブの練習に参加したが、正式オファーには至っていない。

「それだけ自分に足りないものが多いということを感じました」

　参加こそすれども、なかなか決まらない状態は田中にとって大きな不安や焦燥感を生み出しているのは間違いない。だが、彼の表情に悲壮感はなかった。

「今、ネガティブな気持ちはありません。技術面や点を取ること以外で足りない部分を練習参加するたびに感じることができるので、日常からそこを意識して取り組めるのはプラスだと思います。ここから先、チャンスをいただけたら、そこでこれまでの経験を活かす。それしか考えていません」

　青森山田高時代からゴール前での勝負強さが光る選手だった。フィジカルが強く、ボールを収めてからのシュートの威力、思い切りの良さ、そしてこぼれ球への予測の速さなど、まさに泥臭く、気持ちの伝わるストライカーだった。新潟医療福祉大に進んでも、持ち味は変わらず、クオリティは着実に上がっていた。
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　それでも現実は厳しい。それをこれでもかと味わわされているが、田中の姿勢はぶれることはない。

「一歩一歩ですね。ゴールを決める楽しさがあるからこそ、夢を諦められない。もちろん不安や焦りはもうこの時期なので、ないと言ったら嘘になりますが、今はやり続けるしかないと思います。北信越で点を決めていても、全国で決めないと価値がない選手だと思われるし、やはり全国大会は１点の重みが違うので、今大会への思いはかなりあります」

　自分がやってきたことを信じ、自分がストライカーとして生きる意味を再確認しながら、田中は東北のピッチに立っている。次なる相手は関東学生リーグ２部の順天堂大学。

「僕らは関東のチームに勝たないと意味がないと思っているので、まずは次絶対に勝つ。前線でチームのために身体を張って、強引に行くところは行って、ゴールをこじ開けたい。もう一度、全国のファイナルに行きたいですし、そこでチームを勝たせる点を取ることが僕にとっての責務だと思っているので。僕にとっては将来もかかっている特別な夏。後悔のないようにやり切りたいです」

　有言実行あるのみ。北信越ナンバーワンストライカー田中翔太が勝負に舞台で飛躍を期す。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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