どうする川崎?らしさを何も示せなかった札幌戦の前半で浮き彫りになった強い危機感

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2023年08月27日

後半に数的有利を得て同点に追いつくも

札幌戦は2-2のドロー。連敗はストップできたが、勝利を挙げられなかった。写真:滝川敏之

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[J1第25節]川崎2-2札幌/8月26日/等々力陸上競技場

「後ろ向きなプレーが多かった」

 鬼木達監督がそう振り返ったように、川崎が札幌をホームに迎えた一戦、前半は厳しい展開を強いられた。

 後方から丁寧にボールをつなぐ川崎にとって、パスの受け手となる味方が厳しくマークされる、札幌のマンツーマン戦術は相性が悪い。

 もっともこの日は輪をかけて、後ろ向きのパス、トラップが多く、ボールが前に進まない。業を煮やしてロングフィードを送れば、撥ね返される悪循環。上手くいかないからこそ全体の重心も下がり、前線と後方も間延びしたまま。攻撃面では選手間の距離が広がり、守備面では前からの追い込みが機能しない。0-2よりさらに差がついてもおかしくない内容であったと言えるだろう。

 後半頭からマルシーニョを投入し、このアタッカーが相手のファウルを誘い、早い時間に数的有利を得ると、連続ゴールで同点に追いついたのはさすがだが、勝利にはつなげられず、やはり強い印象を残したのは前半の厳しい出来だ。

 世代交代の真っ只中で今季は苦しんできた川崎だが、本来は前への意識を常に持ち、トラップひとつ、パスひとつにこだわり、強気に相手を崩しにかかる、そして守備は即時奪還を目指して攻守の切り替えを素早く行ない、相手を押し込む。そうした川崎の良さが何も現われなかった札幌の前半は、これまで以上に強い危機感を示すものだった。
 
「距離が前と後ろが遠くなってしまった。外から見ていると、前に出せるタイミングはいくつもあるのですが、単純にバックパスをしてしまったり、技術的なところで言えばトラップをひとつ取っても、大きく後ろに下がるような、相手から逃げるようなトラップになれば、当然、相手の圧力を受けてしまいます。シンプルですが、自分の受け方ひとつで、ちょっと角度をつけてピタッと前を向ければ。そこのつながりが少なかったと思います。

(札幌は)マンツーマンですので当然、相手もいるのですが、右足か左足か、もしくはスペースなのか、しっかり使い分けられれば、十分いけたと思いますし、いけているシーンはそういうことをやっているシーンですので、そこはしっかりやっていきたいです。

(守備は)シンプルに下がりすぎたと思います。前が何回かチャレンジして取りにいこうとしていましたが、後ろがついていけないシーンが数多くありました。捕まえられる時は、前が捕まえにいきますが、後ろがどんどん捕まえて確定させて前に押し出すと言いますか、それくらいの気持ちでやっていかないと難しい状況だと思います。弱気になったら、今日の前半のようになってしまいます」

 指揮官も攻守での課題を語った。

 チームは前節の広島戦で8年ぶりのリーグ3連敗を喫し、自信をなくしていた面、失点が続いていたからこそ慎重に試合に入った面もあったのかもしれない。しかし、何より残念であったのは、常に仕掛ける川崎らしさが感じられなかったことだ。

 良さを取り戻すには、技術力、勝利に懸ける想い、チームを引っ張るんだという個々の覚悟など、様々な要素が必要だろう。

「変えなくてはいけないと思います。すべてにおいて甘いと思いますし、ミスをしてもなあなあにしているのではなくて、ミスに対してもっと厳しく言うべきだと感じますし、そういうところにこだわっていかないと結果に結びつかないはず。練習から厳しくやっていかなくてはいけないと思います」

 経験豊富な小林はそう警鐘を鳴らす。

 鬼木監督に訊けば、連敗中も雰囲気は悪くなかったと言う。ただ、よりシビアに取り組み必要があるのだろう。

「3連敗はどれほど選手に影響があったか分かりませんが、今週のトレーニングもそうですが、かなり気合いが入ったなかで取り組んできましたし、この数日間、エネルギーがありました。

 ただ、選手にも言いましたが、トレーニングを含め、常にビッグマッチを戦っているようなそういうメンタルのなかで取り組まないといけないと。失点シーンもそうですし、チャンスの部分もそうですが、いろんなメンタルが必要とされるなかで、どんどんトレーニングも向上させていこうという話をしています。

 そういう意味では、分からないですが、多少なりともどうしても勝たなくてはいけないというプレッシャーはあったのかもしれません。今日は勝たなければいけないゲームだったので、連敗が終わって良かったとひとつも思わないですし、ただ、最後にああやってサポーターの力を借りて押し返しすシーンもあったので、そこを今後につなげていきたいです。すぐに天皇杯があるので、タイトルにこだわりながら全力で臨みたいです」

 果たして川崎はここから立ち直ることができるのか。何度も苦境から脱してきたチームである。今季もその力が今はあると信じたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)


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