小さな奇跡があった
FIFA女子ワールドカップ、オーストラリア&ニュージーランド2023は、スペインが決勝でイングランドを1-0で破り、初めての優勝を飾っている。
スペインにとってイングランドは鬼門だった。昨年の欧州選手権、準々決勝でも敗れている(イングランドは欧州王者に輝いた)。言わば、格上との対決となったわけだが...。
決勝戦、スペインは立ち上がりから一歩も引かなかった。むしろ、高い強度でプレスをかけ、ボールを握って、運ぶところで勇敢さを見せた。戦力的にやや上のイングランドにペースを与えていない。
特筆すべきは、ゴールデンボール賞(MVP)、シルバーボール賞に輝いたアイタナ・ボンマティ、ジェニファー・エルモソの二人だろう。
ボンマティは中盤でボールを動かすエンジンになっていた。彼女が常にポジションを取って優位に立ち、ボールを受けたら前に運ぶ推進力を与え、敵に付け入る隙を与えなかった。スペイン男子代表ならガビに近いか。
エルモソは、優雅な立ち振る舞いだった。ボールを受けるたび、落ち着きを与え、テンポを刻める。国内リーグでは5度の得点王に輝いているが、ゲームを読むスキルとビジョンは世界屈指で、スペイン男子代表ならペドリといったところか。
前半28分、スペインはボールを巡る応酬で勝ってカウンターを発動させている。右サイドから一気に左へサイドチェンジ。これを受けて前に出たオルガ・カルモナが、けれんみなく左足を振ってネットに突き刺した。
スペインは大会を通じ、“敵陣でプレーし、ゴールに迫る”という攻撃姿勢を貫いていた。その過程で、グループリーグでは日本を相手に裏返され、カウンターから立て続けに失点し、大敗を喫したこともある。しかし果敢にボールを前へ運び、崩す、という戦いを曲げなかったことが、世界制覇の道に通じていた。
【PHOTO】長谷川唯のダブルピース、猶本光の決めカット、熊谷紗希のキラキラネイル...なでしこジャパンFIFA公式ポートレートギャラリー
スペインにとってイングランドは鬼門だった。昨年の欧州選手権、準々決勝でも敗れている(イングランドは欧州王者に輝いた)。言わば、格上との対決となったわけだが...。
決勝戦、スペインは立ち上がりから一歩も引かなかった。むしろ、高い強度でプレスをかけ、ボールを握って、運ぶところで勇敢さを見せた。戦力的にやや上のイングランドにペースを与えていない。
特筆すべきは、ゴールデンボール賞(MVP)、シルバーボール賞に輝いたアイタナ・ボンマティ、ジェニファー・エルモソの二人だろう。
ボンマティは中盤でボールを動かすエンジンになっていた。彼女が常にポジションを取って優位に立ち、ボールを受けたら前に運ぶ推進力を与え、敵に付け入る隙を与えなかった。スペイン男子代表ならガビに近いか。
エルモソは、優雅な立ち振る舞いだった。ボールを受けるたび、落ち着きを与え、テンポを刻める。国内リーグでは5度の得点王に輝いているが、ゲームを読むスキルとビジョンは世界屈指で、スペイン男子代表ならペドリといったところか。
前半28分、スペインはボールを巡る応酬で勝ってカウンターを発動させている。右サイドから一気に左へサイドチェンジ。これを受けて前に出たオルガ・カルモナが、けれんみなく左足を振ってネットに突き刺した。
スペインは大会を通じ、“敵陣でプレーし、ゴールに迫る”という攻撃姿勢を貫いていた。その過程で、グループリーグでは日本を相手に裏返され、カウンターから立て続けに失点し、大敗を喫したこともある。しかし果敢にボールを前へ運び、崩す、という戦いを曲げなかったことが、世界制覇の道に通じていた。
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その証拠にイングランド戦、リードしてからも2点目を狙い続けた。強力な相手だけに、圧力を感じてリトリートするのも戦法の一つだろうが、主導権を渡さないことが彼女たちの信条だった。決定機を大会のベストGKに選ばれたメアリー・アープスに阻まれ、勝ち取ったPKさえも防がれながら、攻めることが最大の防御になっていた。
そうした戦いの中、小さな奇跡があった。決勝点を奪ったカルモナは左サイドバックだが、どこか神がかったシュートを決めた。実は決勝戦前日の明け方、彼女の父が亡くなっていたのだという。
「唯一無二のものを勝ち取るのに、(パパは)力をくれました。今夜の私の姿をきっと見ていてくれているでしょう。そして私のことを誇りに思っていてくれているはず。安らかに眠って、パパ」
カルモナはそのメッセージを自らのSNSで発信している。
世界女王になったスペイン。どんな局面でも戦いを曲げなかった信念が、栄光を引き寄せたのかもしれない。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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「唯一無二のものを勝ち取るのに、(パパは)力をくれました。今夜の私の姿をきっと見ていてくれているでしょう。そして私のことを誇りに思っていてくれているはず。安らかに眠って、パパ」
カルモナはそのメッセージを自らのSNSで発信している。
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文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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