2023年７月22日、女子ワールドカップのグループリーグ初戦でなでしこジャパンがザンビアを５−０と圧倒。VAR判定もありストレスが溜まるシーンもあったとはいえ、被シュート数はゼロと内容も伴った勝利と言えるだろう。

　光っていたのはやはり両ボランチの働き。長谷川が効果的な縦パスを何本も入れれば、長野は的確なパスワークで中盤に落ち着きをもたらす。このふたりが攻守をつなぐ潤滑油として機能していたおかげでザンビアを圧倒できたのだ。

　絶妙なトラップとクロスで先制点を演出した藤野、２ゴールを決めた宮澤、無尽蔵のスタミナで右サイドを制圧した清水のパフォーマンスも素晴らしかったが、この３選手が躍動できたのも、長谷川と長野が最高のコンビネーションでピッチを支配してチーム全体のバランスを整えていたからだろう。

　攻守両面で重要な役割を果たすボランチが安定すれば、当然ながらチームはブレない。中盤がまるで整備されていなかったザンビアの不甲斐なさもあって、長谷川と長野の存在は明らかに際立っていた。
 

　このふたりの素晴らしさは守備面でも見て取れた。ザンビアがアバウトなボールを前線に蹴り込む際のポジショニング、その後のセカンドボールの処理など、それらの動作がスムーズで、長谷川と長野の気の利いた振る舞いがあったからこそなでしこジャパンの３バックは安定していたと、そんな見方もできるのではないか。

　実際、ザンビアが中盤でボールをキープした局面での長谷川と長野の位置取りは秀逸だった。ふたりが絶妙にパスコースを限定した結果、石川、熊谷、南の３バックもそれぞれ明確なマークで相手を潰せたのだ。

　スーパーリーグのウェストハム・ユナイテッドFCウィメンに在籍する清水梨紗はそこでの経験から「世界の強豪と戦ううえで大事な要素のひとつが予測」と言っていた。その予測の重要性を示したのが、ザンビア戦の長谷川と長野と言ってもいい。少なくとも、ふたりは別格だった。

　ボランチコンビの力だけで勝ったわけではないが、今大会を勝ち上がるうえで長谷川と長野の力は不可欠。ザンビア戦はそれを知らしめる一戦だった。

文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）

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