第94回全国高校サッカー選手権大会・準決勝
星稜（石川）－東福岡（福岡）
１月９日／12：05／埼玉スタジアム2002
 
　前回王者か、夏の覇者か。準決勝の第１試合は、全国タイトルホルダー同士の対決となった。試合のポイントは、星稜の守備×東福岡の攻撃という構図の主導権争いとなりそうだ。
 
　連覇を狙う星稜のベースは、守備力だ。河崎護監督は、準々決勝で明徳義塾に勝った後で自チームを辛口にこう評している。
 
「ボールを持たされたらなにもできないチーム。ディフェンスの狙いができている時は良いけど、技術が高い子が多いわけではないので、ボールを持つとパスしようとするばかり。（CBの）東方と岡田がふたりでインターセプトをしたり、相手のボールを撥ね返したりしてなんとか保っている」
 
　初戦でゴールを挙げてラッキーボーイとなった加藤貴也を前線にコンバートしたのも、「彼の走力を前線でのプレスとショートカウンターでの飛び出しに使いたいためだった」と言うように、組織的な守備から速攻を仕掛けるのが基本的なスタイルだ。相手のパスワークをよどませ、中盤でボールを奪えれば、東福岡の１ボランチの脇を使い、攻撃的ボランチの大橋滉平、突破力と得点力を兼備するサイドMFの阿部雅志を生かしてチャンスをモノにする力は十分にある。
 
　サイドに追い込むのか、中央へ誘い込むのか。ボールの奪い所がカギだ。東福岡の印象を聞かれて「ワイドに広がって１対１を挑まれると、うちの守備はどうなるか。向こうには、緩急を付けられるドリブルとか個の力がある。勝てる物はなにひとつない」と下手に出た指揮官が、どのような対策を練るのか見ものだ。
 
　一方の東福岡は、攻撃的なスタイルが特長だ。両足で長短のパスを正確に配球できるMF中村健人が司令塔となり、３トップを効果的に使う。とりわけ、左の高江麗央、右の三宅海斗の突破力は高く、相手チームの脅威となってきた。３トップの頂点に入る大型FW餅山大輝が相手の最終ラインに圧力をかけながら、サイドチェンジと縦への仕掛けができれば主導権を握れるだろう。
 
　ただし、３回戦の市立船橋戦、準々決勝の駒澤大高戦と堅守が持ち味のチームには大苦戦を強いられている。駒澤大高戦では、相手のカウンターを警戒してロングボール対策に神経を削られ、攻撃のフォローが遅れて迫力不足に陥った。
 
　期待がかかるのは、ふたつのオプションだ。ひとつは、スーパーサブとなっている藤川虎太朗の投入。インサイドのパスワークを円滑にし、本来はウイングの橋本和征を中央から左へ移すことで攻撃のテンポアップが図れる。
 
　もうひとつは、CFの毎熊晟矢の存在だ。今大会は高さとパワーのある餅山が先発しているが、周囲との連係プレーに長けているのは毎熊だろう。今大会はまだ長時間の出番を得ていないが、準々決勝では途中出場で21分間プレーし、「１、２回戦よりは状態は上がってきた。今日は、先発した時と同じような動きができた」と手応えを示していた。彼が攻撃活性化のキーマンとなる可能性もある。
 
　守備の星稜か、攻撃の東福岡か。90分間（準決勝から45分ハーフ）で勝負が付かなかった場合はPK戦にもつれ込むが、前回優勝の経験を持つ星稜のGK坂口璃久と、市立船橋とのPK戦で２本を止めた東福岡のGK脇野敦至の勝負は見ものだろう。いずれにせよ、最後まで目が離せない試合になりそうだ。
 
取材・文：平野貴也（フリーライター）