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『ヘイゼルの悲劇』から38年…サッカー界は世界が恐怖と悲嘆に包まれた一日から何を学ぶのか【今日は何の日?】

カテゴリ:ワールド

石川聡

2023年05月29日

リスク管理の甘さが、取り返しのつかない事態を生んだ

1985年5月29日、未曽有の惨事が世界に衝撃を与えた。風化させてはいけない出来事だ。(C)Getty Images

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 欧州のサッカーシーズンは、いよいよクライマックスへ。6月10日にトルコのイスタンブールで行なわれるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝は、インテル(イタリア)とマンチェスター・シティ(イングランド)の対戦で、今シーズンの欧州クラブ王者が決まる。

 世界最高峰のレベルを誇るといわれるCLの、その決勝は欧州サッカー界の“華”だ。しかし、38年前の今日5月29日に起きた事態は、それとは真逆の地獄絵図。サポーターの暴挙によって39人が亡くなり、負傷者は400人とも600人ともいわれる未曽有の惨事を引き起こした。いわゆる「ヘイゼルの悲劇」である。

 CLが始まる前の当時は前身の欧州チャンピオンズカップ決勝で、そのときもユベントス対リバプールという、イタリアとイングランドのクラブが顔を合わせた。フランス人MFのミシェル・プラティニを擁するユベントスは、2年ぶり3度目の決勝進出で初優勝を目ざす。前年の決勝でASローマ(イタリア)をPK戦の末に退けたリバプールは連覇、通算5度目のタイトル獲得を狙っていた。

 決戦の舞台となったのはベルギーの首都ブリュッセルにあるヘイゼル・スタジアム。ここは、それまで欧州チャンピオンズカップ決勝を3度、1972年の欧州選手権(現EURO)決勝を開催するなど、ビッグマッチではお馴染みの会場だった。

 一方、創建から55年が経っていたスタジアムは老朽化も進み、両クラブからは決勝を戦うには相応しくないという不満も表明されていた。決勝に先立って1985年2月に行なわれた欧州サッカー連盟(UEFA)によるスタジアム視察は、30分にも満たないうちに終了したという話も伝わっている。

 悲劇の幕が開けたのは、キックオフ1時間前の午後7時ごろ。ゴール裏の立ち見スタンドで、リバプールのサポーターが薄いフェンスを乗り越えてユベントス・ファンの多かったエリアに侵入。その勢いに押されて逃げ惑う人びとは、コンクリート壁に退路を断たれ、あるいは崩れた壁の下敷きとなって、折り重なるように倒れ込んだ。

 ようやく警備隊が駆けつけて鎮静化に努めたが、時すでに遅く。亡くなった39人の内訳は、イタリア人が32人、ベルギー人が4人、フランス人が2人、英国人が1人。最年少は11歳という痛ましい事件となった。

 なぜ、このような事態が発生したのか。

 リバプールのサポーターが陣取る側のゴール裏スタンドは、三つのセクションのうち二つが彼らに割り当てられ、残る一つのセクションはベルギー人などニュートラルなファン向けエリアのはずだった。ところが、ここに正規ルート以外でチケットを手に入れたイタリア人らが入場し、険悪な状況に。試合開始が近づくにつれて緊張の糸は張りつめ、ついにダムが決壊するようにリバプール・サポーターがなだれ込んだ。リスク管理の甘さが、取り返しのつかない事態を生んだ。

 こうした状況に直面して、UEFAはすぐさま試合実施の可否を検討したが、中止することによって、さらにトラブルがエスカレートすることを懸念して開催に踏み切った。約1時間40分遅れで始まった試合は、すでに引退を発表してジョー・フェイガン監督に花道を用意しようとしたリバプールが攻勢。しかし、58分に均衡を破ったのはユベントスだ。ポーランド代表のズビグニェフ・ボニエクが倒されて得たPKを、エースのプラティニが冷静に決めた。その後、リバプールの猛反撃をGKステファノ・タッコーニの好守連発などで凌ぎ、1-0で逃げ切ってついに欧州の頂点に上り詰めた。

 前シーズンの欧州カップウィナーズカップを制覇していたユベントスは、1976-77シーズンのUEFAカップと合わせ、当時の欧州三大クラブカップで優勝した初のクラブともなった。
 
 こうして暗黒の一日は終わった。その4日後、UEFAは制裁措置として、イングランド・クラブの欧州カップ戦への無期限出場停止を発表した。この措置は後に5年間と定められ、リバプールだけはさらに1年が加算される。

 1985-86、1987-88、1989-90シーズンに当時の1部リーグ優勝をはじめ、毎年のように欧州カップ戦への出場資格を得ていたリバプールは、大陸への道が閉ざされ続けた。惨劇の舞台となったヘイゼル・スタジアムはその後、悪夢を振り払うように取り壊され、決勝から10年後の1995年、新たに建設されてボードワン国王スタジアムと名を改め、現在に至っている。

 ユベントスはこの欧州制覇によって、1985年12月のトヨタ ヨーロッパ/サウスアメリカ カップ(トヨタカップ)出場権を獲得。東京・国立競技場でアルヘンティノス・ジュニアーズ(アルゼンチン)と好勝負を繰り広げ、延長戦を戦って2-2と譲らず、PK戦を4-2と制してクラブ世界一の座に輝いた。

 欧州カップ戦史上最悪の出来事とされるヘイゼルの悲劇について、ユベントスは公式サイトで「ヘイゼルは永遠に続き、そして永遠に続かなければならない記憶」と事件を風化させない決意を述べ、リバプールは同じく「ヘイゼル 決して忘れられない日」と題し、亡くなった39人の名前を掲載して哀悼の意を表している。

文●石川 聡

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