J１第２ステージ最終節の湘南戦、佐藤寿人は42分に今季12点目を挙げ、中山雅史氏の持つ通算得点数（157）に並んだ。これまでリーグ戦で積み上げてきたゴール数は歴代トップの200以上。Jリーグ史上最高のゴールハンターが大記録を達成した背景に迫るべく、ジェフ市原（現・千葉）のジュニアユース、ユース時代の４年間で指導にあたった大木 誠氏（現・ジェフユナイテッド株式会社強化担当部長／元・千葉育成部門コーチ、千葉U-18監督）に若かりし頃の“愛弟子”について、話を訊いた。
 
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　先日、電話で話をしたんですが、寿人が言っていたのが「自分は褒められてこなかったのが良かったのかもしれない」ということでした。僕は中２、中３、高２、高３と指導をして、別に褒めなかったつもりはないんですけどね（笑）。ただ、プロになった後は、ジェフでなかなか試合に絡めず、セレッソに行っても出場機会に恵まれなかった。でも、そういう苦しい時間があったからこそ、大きく成長でき、大記録につながったんだと思います。
 
　性格は当時から変わってないですよ。納得できないことには、キッパリと意見を言う子でした。それは練習でも同じで、自分が納得できなければ何度だって繰り返す。先日、広島の新聞記者の方に、今でも居残り練習を続けていると聞きました。それは中学生の時からまったく変わっていない。GKとウイングの選手を呼んで、いつもクロスからのシュート練習をやっていました。ワンタッチでのゴールが非常に多いですが、それは当時からの積み重ねがあってこそです。
 
　それに点を取るということに関しては、天性のものがありましたね。正直言って、ボールキープや、ドリブルは上手くないんですよ（笑）。ただ、自分の得意とするプレーをしっかり理解していました。だからこそ余分なものを省き、ゴールを決められるポジションに必ずいる。それは教えられるものではありませんでした。
 
　また、寿人が高校２年生の時、Jユースカップの決勝で鹿島と対戦して負けたんですが、寿人が点を取ったんです。それがGKの股を抜くゴールで、僕は「ラッキー！」と喜んでしまったんですが、寿人はそれを聞いて、「狙っていました」と怒っていました。ゴールへのこだわりは誰よりも強いんだなと認識させられた出来事でしたね。
 
仙台から広島に移籍する際には、「僕はJ１で活躍してワールドカップに出たいんです」と語っていました。結果的にワールドカップのメンバーには入れませんでしたが、目標を立てたら周りがなにを言っても曲げない。その点もまったく変わってないです。
 
今後に期待することは、怪我をせず、１年でも長く現役でプレーしてほしい。結果は結果で、最も大切なのは「積み重ね」です。寿人の記録は、いつの日か誰かに破られる日が来るでしょう。だから、なによりも過程が大事。そんな寿人を見て、「自分もああなりたい」と思う人はたくさんいるはずです。
 
取材・構成：本田健介（サッカーダイジェスト編集部）