救出されたはずなのに、搬送先の病院も本人の所在も分からない。現場は混迷を極めている。

　現地月曜日の早朝、トルコ南東部で発生した大地震は、隣国シリアや他の周辺国にも多大な被害をもたらした。そんななか、トルコ１部リーグのハタイスポルに籍を置くガーナ代表ＭＦ、クリスティアン・アツが行方不明だとの一報が流れる。自宅のある11階建てのビルが倒壊し、９階に居を構えていた31歳が瓦礫の下敷きになっていると伝えられたのだ。

　かつて所属したニューカッスルやチェルシーが無事を祈るツイートをいち早く発信するなど、世界中のサッカーファンからも安否を心配する声が数多く寄せられた。そして地震発生からおよそ26時間後の現地火曜日朝、ハタイスポルのムスタファ・オザル副会長はアツが瓦礫から引き出されたと公表。右足と呼吸器系にダメージを負っているものの命に別条はなく、搬送先の病院で治療を受けていると明かし、関係者はひとまず胸をなでおろした。

　だが、あれから半日以上が経過しても、情報がいっさい更新されていない。ロンドンに住むアツの家族や親族でさえ本人と連絡が取れない状況が続いており、まるで所在が分からないというのだ。

　地元メディアに衝撃の事実を明かしたのは、ハタイスポルのチームドクターであるグルベイ・カフベチ氏だ。医師は搬送先と報じられたドルチョル病院に駆けつけたものの、「隅々まで探したが彼はそこにいなかった」と説明し、「残念だけど、まだ見つかっていないと言わざるを得ない」と誤報の可能性を指摘した。

　ドクターと行動を共にしたハタイスポルのヴォルカン・デミレル監督も慎重だ。「クリスティアン・アツと（一緒に下敷きになったスポーツディレクターの）タネル・サブトに関して、新しいニュースは何もない」とうなだれ、「現時点ではアツが生存していると断定はできない」と厳しい表情を浮かべた。
 

　さらにアツの代理人であるナナ・シャシェール氏は「誰もが全力で彼の所在を探している。家族にとってはまさに壊滅的な事態で、どうか察してほしい。取材などは控えてもらえればと思う」と呼びかけた。そしてガーナのトルコ大使で情報収集に当たっているフランシスカ・アシーテイ＝オブントン氏も、「トルコ国内は大混乱の最中にある。どの医療施設に搬送されたのかを懸命に調査しているところだ」と話すにとどめた。

　では、救出されたというあの一報はなんだったのか。確かにその直後から、なんら情報はアップデートされてこなかった。オザル副会長は「救出された」とした前日の声明を撤回し、「彼らはまだ瓦礫の下にいるようだ」と発言。何が真実なのか、完全に情報が錯綜している。

　いまはアツがどこかの病院に運ばれて、治療を受けていることを祈るほかない。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

【画像】アツが被災の数時間前に投稿したツイート。返信欄には世界中のファンからメッセージが…

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