「相手に蹴られたり、敵ファンから野次られたり…」指揮官も苦言を呈したヴィニシウスへの“攻撃”。本人は移動中の車内でカウンセリングを――【現地発】
カテゴリ:連載・コラム
2023年02月09日
「全員で協力して、守っていかなければならない」
レアル・マドリーのカルロ・アンチェロッティ監督がラ・リーガ第18節のアスレティック・ビルバオ戦の後に、ここ数か月、ヴィニシウス・ジュニオールを取り巻く環境について問題提議した。
「誰もがヴィニシウスにプレッシャーをかけている。相手の選手に蹴られたり、ライバルのファンから野次られたり、時にはレフェリーからも……」
数字は指揮官の言葉を裏付けている。そのビルバオ戦終了時点で、ヴィニシウスの被ファウル数62は、57のネイマール(パリ・サンジェルマン)とウィルフレッド・ザハ(クリスタル・パレス)を抑えて、5大リーグの中で最多の数字だ。ラ・リーガの2位は、45のラージョ・バジェカーノのイシ・パラソンだ。
「もっとみんなヴィニシウスをリスペクトすべきだ」というアンチェロッティの思いは、ヴィニシウスの側近も共有している。関係者曰く、ヴィニシウスがとりわけ問題視しているのが、レフェリングの基準で、スペインの審判は危険なプレーから選手を守る存在になっていないと訴えているという。
これまた数字がヴィニシウスの主張を裏付けている。ここまで90分当たりの被ファール数はチャンピオンズリーグ(CL)の2.24に対し、ラ・リーガが3.76。ワールドカップも試合数が少ないとはいえ、2.12。ラ・リーガの数字は、CLに比べ約70%増で、その差は歴然としている。
もちろんヴィニシウスサイドもただ嘆いているわけではない。とりわけ注力しているのが、本人の意識改革だ。車で20分ほどかかる自宅から練習場までの往復の道中で、ちょっとしたカウンセリングを行ない、ライバルファンを相手にしない、執拗なファウルに遭っても冷静さを失わないといった対処法を説いている。最近もビジャレアルのホセ・マヌエル・レイナやマジョルカのハビエル・アギーレ監督がベンチからけしかけていたのは記憶に新しい。
「誰もがヴィニシウスにプレッシャーをかけている。相手の選手に蹴られたり、ライバルのファンから野次られたり、時にはレフェリーからも……」
数字は指揮官の言葉を裏付けている。そのビルバオ戦終了時点で、ヴィニシウスの被ファウル数62は、57のネイマール(パリ・サンジェルマン)とウィルフレッド・ザハ(クリスタル・パレス)を抑えて、5大リーグの中で最多の数字だ。ラ・リーガの2位は、45のラージョ・バジェカーノのイシ・パラソンだ。
「もっとみんなヴィニシウスをリスペクトすべきだ」というアンチェロッティの思いは、ヴィニシウスの側近も共有している。関係者曰く、ヴィニシウスがとりわけ問題視しているのが、レフェリングの基準で、スペインの審判は危険なプレーから選手を守る存在になっていないと訴えているという。
これまた数字がヴィニシウスの主張を裏付けている。ここまで90分当たりの被ファール数はチャンピオンズリーグ(CL)の2.24に対し、ラ・リーガが3.76。ワールドカップも試合数が少ないとはいえ、2.12。ラ・リーガの数字は、CLに比べ約70%増で、その差は歴然としている。
もちろんヴィニシウスサイドもただ嘆いているわけではない。とりわけ注力しているのが、本人の意識改革だ。車で20分ほどかかる自宅から練習場までの往復の道中で、ちょっとしたカウンセリングを行ない、ライバルファンを相手にしない、執拗なファウルに遭っても冷静さを失わないといった対処法を説いている。最近もビジャレアルのホセ・マヌエル・レイナやマジョルカのハビエル・アギーレ監督がベンチからけしかけていたのは記憶に新しい。
ヴィニシウスは爆発力が持ち味の選手だ。昨シーズン、急成長を遂げてから、相手の警戒はさらに強まっており、こうした試みはその対策でもあるが、関係者が抱いているもう一つの危惧が、怪我のリスクだ。現時点では彼らの胸に収めているだけで、ヴィニシウスと直接話し合うまでには至っていないが、同様の懸念は、クラブ内にも広まっている。アンチェロッティ監督は次のように言及している。
「そのような事態になることを望んでいないが、我々も心配している。全員で協力して、守っていかなければならない。ヴィニシウスはマドリーだけでなく、サッカー界を盛り上げるためにも必要な選手だ。それだけの才能の持ち主だからね」
「心理状態が重要なウェイトを占める」関係者はヴィニシウスをこう評する。テレビコメンテーターの人種差別発言に公然と異を唱えたことで風当たりが強くなっているのは事実だが、心理的に影響を受けているようなところは見られないという。もちろんこの件についてもヴィニシウスは自分を守るために行動に移したに過ぎないと強調する。
本人の意識の転換を促しながら、周囲のサポートの必要性を訴える。“ヴィニシウス・チーム”の取り組みは続いていく。
文●ダビド・アルバレス(エル・パイス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。
「そのような事態になることを望んでいないが、我々も心配している。全員で協力して、守っていかなければならない。ヴィニシウスはマドリーだけでなく、サッカー界を盛り上げるためにも必要な選手だ。それだけの才能の持ち主だからね」
「心理状態が重要なウェイトを占める」関係者はヴィニシウスをこう評する。テレビコメンテーターの人種差別発言に公然と異を唱えたことで風当たりが強くなっているのは事実だが、心理的に影響を受けているようなところは見られないという。もちろんこの件についてもヴィニシウスは自分を守るために行動に移したに過ぎないと強調する。
本人の意識の転換を促しながら、周囲のサポートの必要性を訴える。“ヴィニシウス・チーム”の取り組みは続いていく。
文●ダビド・アルバレス(エル・パイス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸
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