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目頭が熱くなった大島僚太の復帰弾。葛藤を抱えた先にこそ待っていた川崎の10番への等々力のスポットライト

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年09月01日

鳥栖戦で見事なゴールを奪う

笑顔が弾けた大島。負傷からの復帰を自らのゴールで示した。(C)SOCCER DIGEST

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[J1第20節]川崎4-0鳥栖/8月31日/等々力陸上競技場

 目頭が熱くなるようなゴールだった。

 新型コロナウイルスの影響で延期となっていた20節の鳥栖戦、3連勝中の川崎はスタメン数人を入れ替えたが、56分までに3点のリードを得ると、87分に試合を締める4点目を決めたのは、前節に戦列復帰し、この日も後半途中から出場していた大島僚太だった。

 宮城天の左からのクロスにFW小林悠が突っ込み、相手守備陣ともつれてこぼれたボールに、走り込んだのが川崎が誇る10番だった。

 試合の2日前、その口から私たちが想像もできないような葛藤を訊いていただけに、やはり等々力には神様がいるかのように、厳しい道を歩んできたからこそスポットライトが当たり、リハビリの様子を間近で見てきたからだろう、チームメイト誰もが笑顔で迎える姿にはグッとくるものがあった。

 昨季、2021年は2月23日のトレーニングで右ふくらはぎを痛めて全治約12週間と発表され、7月にウズベキスタンで開催されたACLで待望の復帰を果たすも、帰国直後の天皇杯・千葉戦で再び負傷。10月に戦列に戻ったが、チームが2連覇を果たしなか、リーグ戦は7試合(253分)・1ゴールの成績に止まっていた。

 その前年である2020年は尊敬する中村憲剛のラストシーズン。引退試合となった2021年元日の天皇杯決勝・G大阪戦後には涙を浮かべながら感謝の想いと「自分が引っ張って、覚悟を持って、戦っていきたいと思います」と決意を口にしていただけに、ピッチに立てない日々に思うところもあったのだろう。

 そして迎えた今季、2022年、富士フイルム・スーパーカップやリーグ開幕戦に先発するまずまずのスタートも、3月30日のトレーニングで右足関節靭帯、右近位脛腓靭帯を損傷し、全治約8~10週間。6月に復帰し、主にアンカーとして“川崎らしさ”を象徴する存在として素晴らしいパフォーマンスを見せていたが、7月に組まれたパリ・サンジェルマンとの一戦の直前に再び怪我に襲われる。今度は右ハムストリングの肉離れで全治約6週間と診断された。

 
 それでも8月27日の鹿島戦で復活を果たす。その2日後、心境を訊くと、ここ2年の葛藤も話してくれた。

「本音を言うと、去年のほうが厳しかったです。去年は同じ個所の繰り返しでもあったので……。

 でも今年も思いっきりサッカーができないとか、自分がしたいプレー、イメージできる動きができないというストレスを感じる部分はやはりあります。寝る前を含めて、寝ても覚めても、(今年)3月に怪我したところの痛みの確認から朝始まって、それが一日の始まりとしてありました。

 それは今も変わらずストレスはストレスですが、今はかろうじてサッカーをできている状況なので、やっぱり去年のほうが辛かったかなと。今年も今年で辛いですが、自分のなかでなんとか頑張ろうと思っています」

 そして耳にして改めてズシリときたのは「あまり公に言うことでもないのかな」としながら、自然と口にした言葉だった。

「家族がいなかったらスッと辞める決断を含めてというところもあるのですが」
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