ヴェルメーレンこそ今夏の「最大の収穫」だ。
開幕から2試合を終えたバルサを評価すれば、ズバリ、「低調」だ。
このタイミングで代表ウイークを迎えた幸運に感謝すべきである。3冠を達成した昨シーズン終盤の勢いは消えてしまい、パスもリズミカルにつながらない。リオネル・メッシも“いまだ”ノーゴールだ。
このチームが3冠王者だとは、とても思えない。
とはいえ、パニックに陥る必要はない。
ビッグクラブは得てしてスロースタートで、事実、レアル・マドリーも似たり寄ったりの状態で、数か月前にCL決勝を戦ったユベントスもそうだ。
最高ではないが、最悪でもない。調子はそのうち上がっていくだろう。私はそう楽観している。
移籍市場に関しては、ご存じのように補強禁止処分中でこの夏に選手を新たに加えることはできなかった。アルダ・トゥランとアレイクス・ビダルは獲得したが、選手登録が認められるのは処分が明ける来年1月。それまで現有戦力で戦わなければならない。
もっとも、戦力的上積みがまったくなかったわけではない。
怪我のため加入1年目の昨シーズンを丸々棒に振ったトーマス・ヴェルメーレンは、事実上の新戦力と言えるだろう。2節のマラガ戦で決勝ゴールを決めたこのベルギー代表CBは、今夏の「最大の収穫」だ。
そう、このヴェルメーレンこそ、今シーズンのバルサのキーマンであり希望だと、私は評価している。
なぜなら、しばらく“無風状態”だったジェラール・ピケとハビエル・マスチェラーノのレギュラーCBコンビに刺激を与え、チームを活性化する可能性を示しているからだ。
ピケとマスチェラーノしか頼れる人材がいなかったCBは、数年来のアキレス腱だった
マルク・バルトラは、永遠の有望株であることがはっきりした。いまでは数少なくなったカンテラーノ(カンテラ出身者)であり、個人的に思い入れはあるが、現実はまた別だ。どう好意的に見ても、バルトラはバルサのレギュラーCBの器ではない。それは指揮官のルイス・エンリケも分かっている。
ヴェルメーレンとともに昨シーズン獲得したジェレミー・マテューは、激しさやスピードは評価できるが、いかんせんボールスキルが足りない。相手FWに寄せられると、慌てて左のジョルディ・アルバに預けるか、GKに戻すかのどちらかで、組み立てはそこで行き詰ってしまう。
その点、ヴェルメーレンは違う。彼の持ち味はそつのない守備に加えて、積極的な前への意識にある。ボールを持って前を向き、縦にパスを入れることができるのだ。ショートパスだけではなく、中長距離のパスも通せる。組み立てのクオリティはバルサの水準に十分に達している。
これから出場機会が増え、バルサスタイルに慣れるにしたがい、パフォーマンスはさらに良くなっていくだろう。ベルギー代表でコンビを組むヴァンサン・コンパニ(マンチェスター・シティ)が請け合うように、ヴェルメーレンは「世界最高クラスのCBになるポテンシャルを秘めている」のだ。
ピケ&マスチェラーノにとって、ヴェルメーレンの存在は間違いなく刺激になる。とくにピケだ。気の抜けたようなプレーも、これでなくなるのではないか。
序盤戦最大のトピックは、メッシでもネイマールでも、ルイス・スアレスでもない。そのトリデンテのはるか後方でクールにパスを繰り出すベルギー人に、私は可能性を見出した。
【記者】
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはロブソンの通訳時代から親密な関係を築く。
【翻訳】
豊福晋
このタイミングで代表ウイークを迎えた幸運に感謝すべきである。3冠を達成した昨シーズン終盤の勢いは消えてしまい、パスもリズミカルにつながらない。リオネル・メッシも“いまだ”ノーゴールだ。
このチームが3冠王者だとは、とても思えない。
とはいえ、パニックに陥る必要はない。
ビッグクラブは得てしてスロースタートで、事実、レアル・マドリーも似たり寄ったりの状態で、数か月前にCL決勝を戦ったユベントスもそうだ。
最高ではないが、最悪でもない。調子はそのうち上がっていくだろう。私はそう楽観している。
移籍市場に関しては、ご存じのように補強禁止処分中でこの夏に選手を新たに加えることはできなかった。アルダ・トゥランとアレイクス・ビダルは獲得したが、選手登録が認められるのは処分が明ける来年1月。それまで現有戦力で戦わなければならない。
もっとも、戦力的上積みがまったくなかったわけではない。
怪我のため加入1年目の昨シーズンを丸々棒に振ったトーマス・ヴェルメーレンは、事実上の新戦力と言えるだろう。2節のマラガ戦で決勝ゴールを決めたこのベルギー代表CBは、今夏の「最大の収穫」だ。
そう、このヴェルメーレンこそ、今シーズンのバルサのキーマンであり希望だと、私は評価している。
なぜなら、しばらく“無風状態”だったジェラール・ピケとハビエル・マスチェラーノのレギュラーCBコンビに刺激を与え、チームを活性化する可能性を示しているからだ。
ピケとマスチェラーノしか頼れる人材がいなかったCBは、数年来のアキレス腱だった
マルク・バルトラは、永遠の有望株であることがはっきりした。いまでは数少なくなったカンテラーノ(カンテラ出身者)であり、個人的に思い入れはあるが、現実はまた別だ。どう好意的に見ても、バルトラはバルサのレギュラーCBの器ではない。それは指揮官のルイス・エンリケも分かっている。
ヴェルメーレンとともに昨シーズン獲得したジェレミー・マテューは、激しさやスピードは評価できるが、いかんせんボールスキルが足りない。相手FWに寄せられると、慌てて左のジョルディ・アルバに預けるか、GKに戻すかのどちらかで、組み立てはそこで行き詰ってしまう。
その点、ヴェルメーレンは違う。彼の持ち味はそつのない守備に加えて、積極的な前への意識にある。ボールを持って前を向き、縦にパスを入れることができるのだ。ショートパスだけではなく、中長距離のパスも通せる。組み立てのクオリティはバルサの水準に十分に達している。
これから出場機会が増え、バルサスタイルに慣れるにしたがい、パフォーマンスはさらに良くなっていくだろう。ベルギー代表でコンビを組むヴァンサン・コンパニ(マンチェスター・シティ)が請け合うように、ヴェルメーレンは「世界最高クラスのCBになるポテンシャルを秘めている」のだ。
ピケ&マスチェラーノにとって、ヴェルメーレンの存在は間違いなく刺激になる。とくにピケだ。気の抜けたようなプレーも、これでなくなるのではないか。
序盤戦最大のトピックは、メッシでもネイマールでも、ルイス・スアレスでもない。そのトリデンテのはるか後方でクールにパスを繰り出すベルギー人に、私は可能性を見出した。
【記者】
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはロブソンの通訳時代から親密な関係を築く。
【翻訳】
豊福晋