ホームで迎えた第11節・C大阪戦を１－１で終えた鳥栖。前半から主導権を握ったが73分にPKで先制点を許し、途中出場の藤田直之が83分にゴールを挙げて追いつき、その後もチャンスを作ったが次の１点は奪えなかった。

　この結果、３勝７分１敗で勝点16の６位。ただ、この順位に驚いている人は多いだろう。

　開幕前の順位予想では降格候補に挙げられることも多かったから。昨オフに主力だった選手の約半数がチームを去り、半分以上の選手が入れ替わった今季のチーム。そのチームを率いるのは、J１でのプレー経験も指導歴もない川井健太監督だったから、そうした見方をされるのも仕方のないことだった。

　しかし、今季初黒星は第８節（京都戦／●１－３）とリーグで最も遅かった。一方、ここまでリーグ最多タイの７分と勝ちきれていないのも事実。

　キャプテンの藤田は「やっているサッカーを考えたら、もう少し上に行けてもいいんじゃないかという感覚。勝ち切れていない印象。序盤戦に戦ってきたサッカーをベースによりパワーアップしたい」とC大阪戦後に振り返った。

　藤田が話したように、試合内容では相手を上回ることが多い。しかし、それを思うような結果につなげられていない。チーム総得点はリーグ４位タイの14点だが、約３分の２にあたる９点は、第７節・札幌戦の５点（〇５－０）と、第10節・柏戦の４点（〇４－１）で稼いだもの。試合開始からフルパワーで戦い、自分たちの時間にゴールを奪えばその勢いに乗って畳み掛ける力を示した。

　だが、接戦を勝ち切るためのゴールを奪う逞しさや試合運びという点では、まだ課題がある。それでも川井監督はここまでの戦いぶりに一定の手応えを感じている。C大阪戦後の会見で「我々のフットボールを展開するにあたって、多くの選手、ほぼ全員ですが、怪我で離脱している選手以外はそれを理解して実践できるようになってきたこと」と話した。

　そのうえで川井監督はチームに今後加えたい、変化させたい部分として「ラスト３分の１の精度」と「スピーディさ」を挙げた。鳥栖の今季シュート数77本はリーグ最少。シュートを打たないとゴールは奪えないから、勝ち切るためにも川井監督の挙げた２つのことをレベルアップする必要がある。
 

　DFファン・ソッコも「最後の崩しの部分やチャンスを多く作って決め切るところ、後ろから攻撃の厚みを持たせるところは試合を重ねるごとに良くなっている」とチームが前に進んでいることを口にしながら、こう続けた。「それで満足せずに、練習から他人に委ねず『自分で勝負を決めてやる』という意欲が求められている」とメンタル面に言及。

　川井監督もメンタル面について話している。「ゴールに近づけば近づくほど、少しメンタルのところをコントロールできるようになると、景色が変わってくるんじゃないかなと思います。ただ、それはトレーニングやそういうシチュエーションを多く経験しなければいけないかもしれないので、そこも今後、選手が伸びる、楽しみなところでもありますね」。

　川井監督のこの言葉を信じて、選手一人ひとりの成長を待っていれば、チームは完成形へと近づき、自ずと勝利も増えていくはず。今の鳥栖は、シーズン前の予想を大きく覆すポテンシャルを感じさせている。

取材・文●荒木英喜

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