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なぜモドリッチの“ゼロトップ”は失敗に終わったのか。「局面の勝利」の重要性から読み解く

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2022年04月17日

もし序盤にバルベルデが得た決定機を決めることができていたら――

クラシコでアンチェロッティ監督が試みたモドリッチの「0トップ」は失敗に終わった。(C)Getty Images

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 局面での勝敗を何度も積み重ねることで、サッカーというスポーツは成り立っている。それは球際だったり、五分五分のボールの争いだったり、サイドチェンジやワンツー、あるいは、シュートの精度だったりするかもしれない。相手選手がいるせめぎ合いの中、そこでの「格闘」を上回ることで、プレーを好転させられる。

 結果としてゴールに結びつけ、勝利を得られるのだ。
 
 今年3月、レアル・マドリーはFCバルセロナとの「クラシコ」で、エースFWであるカリム・ベンゼマが不在だったため、カルロ・アンチェロッティ監督は一計を案じた。ルカ・モドリッチをゼロトップで起用。中盤のフェデリコ・バルベルデ、トニ・クロース、カゼミーロとボックスを構成し、変幻自在に動くことで優位性を生み出し、両ワイドのヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴの二人を生かそうとしていた。
 
 結果は完全に失敗に終わった。
 
 モドリッチはサッカーインテリジェンスに優れ、どのポジションにいてもやるべきことを心得て、神出鬼没なプレーができるが、センターフォワードではない。相手の屈強なセンターバックと駆け引きする点では、かなり分が悪かった。肉体的強度で劣る一方、機動力や中盤とのコンビネーションで上回る狙いだったはずだが……。バックラインに優位性を与えてしまった。
 
【動画】バルサが怒涛の4ゴール!衝撃の結果に終わったエル・クラシコの模様をチェック
 バルサのセンターバック、ジェラール・ピケ、エリク・ガルシアの二人は、センターフォワードとの消耗戦から免れて、悠然とプレーすることができた。面白いようにビルドアップし、容易にディフェンスし、攻守でリード。そのアドバンテージをチーム全体に与え、セルヒオ・ブスケッツ、ペドリが中盤で自在にボールを動かした。そして右ではウスマンヌ・デンベレがナチョとの1対1で勝利し、オーバメヤン、フェラン・トーレスも躍動したのだ。

 マドリーは、左に配置したヴィニシウス一人でバルサ陣内に入り、火の手を上げるつもりだったのだろう。スピードとスキルが融合したドリブルは、数々のディフェンスを悩ましてきた。しかしマーク役に配置されたロナウド・アラウホも手練れで、切り返してもついてこられるスピード、パワーで対抗。ヴィニシウスはてこずって、完全に相殺されていた。際どい場面は作ったが、局面の勝利に導けなかった。

 その結果、マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウで0-4と大敗した。局面での勝負の積み重ね。それを考えれば「自明」だった。

 もっとも、あらゆる局面で分が悪かったとしても、ゴールにつながる一つの局面を制することによって勝利できるのも、サッカーというスポーツの醍醐味である。

 もし序盤にバルベルデが得た決定機を決めることができていたら――。アンチェロッティの講じた策は、勝機につながっていたかもしれない。先制したマドリーは守りを固めることができ、ヒット&アウェーのような戦いも可能だったはずだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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