「三笘（薫／ユニオンSG）に関しては、このまま無失点で行きながらも、彼の攻撃力で得点のチャンスが生まれるのではないのかなということで起用しました。プラス、オリンピックで（上田）綺世（鹿島）と三笘の関係は非常に良かったので、そういうことも含めて使いました」

　日本代表の森保一監督は、24日に行なわれたカタール・ワールドカップのアジア最終予選・オーストラリア戦の84分に、原口元気（ウニオン・ベルリン）とともに三笘を投入した思惑をこのように語った。

　ラスト６分で０－０、勝点１を上積みして日本に戻れば、29日のベトナム戦は引き分け以上でOK。あえてリスクを冒す必要がないからこそ、１枚はハードワークのできる原口を選択したのだろう。

　だが、単に守り切るだけでは日本サッカーに未来はない。それは指揮官が４年前の2018年ロシアW杯で、西野朗監督の采配を隣で見ながら痛感したことだった。

「西野さんの時は、守備はしっかりしないといけないですけど、『自分たちはできるんだ』『勇敢に戦っていけば世界の強豪と渡り合っていける』ということを見せてもらった。攻撃的にボールを握るとか、自分たちから仕掛けていく部分は受け継いでいきながら、次のW杯でベスト16の壁を破っていきたいと考えていました」

　森保監督は７大会出場決定から一夜明けた現地取材でこう語ったが、三笘というカードは「どんな状況でも攻撃姿勢は絶対に捨てない」という意思表示だったのではないか。

　そんな期待に24歳のドリブラーは見事に応えた。89分の先制点はお互いを熟知する守田英正（サンタ・クララ）と山根視来（川崎）との連係から、中へ飛び込んで右足を振り抜いた形だった。

　アディショナルタイムのダメ押し点は得意の「ヌルヌルドリブル」が起点。敵を次々とはがし、４人目のマークの手前でゴール。「あの時間帯に薫が入って１対１を仕掛けたら全部抜ける」と右サイドの伊東純也（ヘンク）も太鼓判を押した通りの展開になった。

「世界の選手とやることで慣れというか、自分にもいろんな幅やできることが増えた。そういう自信は日本にいる時よりはすごく大きくなったかなと思います」
 

　三笘はギラギラ感を漂わせた。東京五輪で不完全燃焼感を味わった男が急激な成長を遂げているのは心強い。カタールの扉を若い世代がこじ開けたことにも大きな意味がある。

　実際、この日は板倉滉（シャルケ）、田中碧（デュッセルドルフ）が先発。途中から中山雄太（ズウォーレ）、上田、三笘と東京五輪世代の５人が大一番を経験した。とりわけ、板倉の一挙手一投足は目を見張るものがあった。コンディションが今一つだった吉田麻也（サンプドリア）と、前がかりになった長友佑都（FC東京）の背後のスペースを徹底的に狙われた際も、板倉が的確なカバーリングを披露。シュートに持ち込ませなかった。

「常に相手より先に準備しないといけなかった。カウンター１本の怖さもあったので、DFとして確実に防ぐ必要があった」と本人も集中。吉田以上の安定感を示すことに成功した。

　今後の状況次第では、怪我がちで東京五輪以降、あまり代表に合流できていない冨安健洋（アーセナル）から定位置を奪う可能性もありそうだし、板倉と冨安というセンターバックコンビがファーストチョイスになることも考えられる。そのくらいの勢いを感じさせた。

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