タケ・クボ（久保建英）にとってマジョルカがアスレティック・ビルバオ相手に手にした勝利は単なる１勝以上の価値がある。彼はこの一戦でここ数試合、失っていた自信を取り戻したのだ。

　象徴的だったのは、決勝ゴールが決まった後の過剰なまでの喜びだ。タケはその瞬間、内に秘めていた怒りを発露させた。誰もがこのゴールがマジョルカのキャリアにおけるターニングポイントになることを期待している。

　90分間通して見れば、そのパフォーマンスは決してポジティブなものではなかった。マジョルカが常に押し気味に試合を進めていたにもかかわらず、ポジション取りが良くなく、周囲と動きがかみ合わなかった。ドリブルを仕掛けても不発に終わり、強引な突破がボールロストに繋がる場面もあった。むしろルイス・ガルシア・プラサ監督が、後半の早い時間帯に交代させなかったのが不思議なほどだった。

　この日もタケは右サイドハーフでプレーした。しかし守備面での課題を露呈し、ビルバオに執拗にその右サイドを狙われた。右サイドバックのパブロ・マッフェオの頑張りで何とか相手の攻撃を跳ね返すことができていたが、攻守における貢献度は高いとは言えなかった。しかしルイス・ガルシア監督はピッチに置き続け、そしてその信頼が88分の決勝点に実を結んだ。

　記録では相手GKのウナイ・シモンのオウンゴールという形となったが、ここ数試合、存在感が低下していたタケにとってこの得点は重要なターニングポイントになりうる。前節のカディス戦に続く２連勝を飾ったチームにとってもそれは同様だ。

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　実は、つい最近まで、マジョルカのロッカールームには不穏な空気が漂っていた。選手同士が口を利かないとか、ベテラン組と移籍組の間に隔たりがあるとかいった噂がまことしやかに囁かれていた。しかしこの連勝でそうしたピッチ外の雑音は収まるはずだ。

　その意味でも、冬の移籍市場でのヴェダト・ムリチ、セルヒオ・リコ、ジョバンニ・ゴンサレスの加入、守備の要のアントニオ・ライージョの戦列復帰が格好のカンフル剤になっている。本拠地ソン・モイスに醸成されたムードもそんなV字回復を見せるチームとの一体感を如実に表していた。

　観客は懸命な声援で選手たちを後押しし続け、一緒に勝利の喜びを分かち合った。なかでも、ファンの心を鷲掴みにしたのが、前述したようにゴールセレブレーションで感情を爆発させ、さらに試合終了後にマイクに向かって誠実で自然体なメッセージを発したタケだった。

　試合の翌日になっても、タケとムリチへの称賛の声が相次いでいる。２人による新ホットラインの形成に期待が膨らむが、なかでもSNS上で盛り上がっているのが、両選手が来シーズンもマジョルカのユニホームを着てプレーする可能性があるかという待望論だ。

　もちろんそのためには、タケの所属元レアル・マドリーから、３度目となるレンタル移籍の承認を得る必要がある。一方、ムリチについてはレンタル元のラツィオとの契約内容には、1200万ユーロ（約15億円）の買い取りオプションが盛り込まれている。行使することになれば、クラブ史上最高額の移籍金となるが、もちろんその大前提は、マジョルカが１部残留を達成することである。

文●エレナ・ガルシア（ディアリオ・デ・マジョルカ紙マジョルカ番）
翻訳●下村正幸

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