林がスーパーセーブでチームを救い、その後広島にゴールが生まれる。今季何度その光景を目にしてきただろうか。G大阪戦における攻撃面の殊勲者が先制点を挙げたドウグラスであり、ダメ押しゴールの清水なら、守備面のヒーローは間違いなく守護神の林だ。

【J１ PHOTOハイライト】２ndステージ・16節 G大阪 ０-２ 広島

　この日は、G大阪のエース宇佐美との攻防は実に見応えがあった。立ち上がりにG大阪にポゼッションを握られて押し込まれるなか、15分に左サイドでワンツーからゴール前に抜け出した宇佐美と１対１を迎える。足もとへのシュートを左手１本でファインセーブ。このワンプレーをきっかけに、広島は徐々にリズムを取り戻していくのだが、林はこのシーンの舞台裏をこう振り返る。
 
「シュートを打たれたとしても、３バックの外側の、角度がないところからなら止められる自信はあった。（宇佐美に）打たれる前からそんなに危ない感じはなかったけど、コースを限定してくれたシオ（塩谷）とか千葉ちゃんの協力があってこそのセーブ。あの時間帯さえ凌げば、自分たちに流れを持って来られると思っていた」
 
　55分にドウグラスのビューティフルFKで先制した後半にも、再び見せ場はやってくる。終盤の81分、塩谷と森﨑和がロングボールにお見合いしてしまい、宇佐美に１対１の決定機を与えてしまう。それでも、素早く飛び出した林は身体を目一杯広げて立ちはだかり、右手でわずかに触ってシュートの軌道を変えてみせた。
 
「角度はそんなに良くなかったし、（宇佐美は）ボールを右足で持っていた。左足でもたれていたら、また違っていたかもしれないけど、良いポジションに入れたと思う。慌てることはなかった」
 
　もし、宇佐美に同点弾を決められていたら、ステージ優勝や年間勝点１位に黄信号が灯っていたかもしれない。リベロの千葉は「最後の部分で（林）卓人さんがいるのは大きい」と守護神を称える。「我慢して我慢して、決めるところで決め切るのが今年の広島の強み」（塩谷）なら、仮に思い通りにゲームが運べなくても無失点で凌ぐ粘り強い守備もまた、強さを支える要素だ。