13年6月に宮成GMの訃報。関係者全員が誓った“恩返し”。
昇格までのクラブ史のなかで、欠かすことのできない存在がある。
「まず宮成さんの顔が浮かびました」
4位以上が確定した栃木ウーヴァ戦。その瞬間に上野監督の脳裏に浮かんだのは、故・宮成隆前GMだった。クラブ創設に尽力し、最初の監督として指揮も執った。上野監督にとって宮成氏は大学時代の先輩。旧知の間柄でもあった。
宮成氏は監督退任後もクラブの顔として引っ張り続けたが、13 年6月、志半ばにして死去。直後の試合となったNTN岡山戦では半旗を掲げ、選手全員が喪章を巻いた。13年から14年でコーチングスタッフと選手は大幅に入れ替わったが、56歳の若さで逝去した故人のチーム愛と山口県初のJリーグチームを作ろうという強い意欲は新体制へと受け継がれていく。「宮成さんが掲げてきた想いに応えられたのかなと」。上野監督にも安堵の表情が浮かんだ。
11月19日の記者会見では、河村社長も「良い報告が宮成さんにできれば」と切り出した。故・宮成氏のほか、佐竹博前代表、株式会社化前の運営法人の山根幹夫理事長などの名前を挙げ、「皆さんがいなければクラブは成り立たなかった」と振り返った。河村社長自身も、サッカー選手としてマツダ、横浜フリューゲルスなどで活躍。現役引退後は山口県内にクラブチームを創設し、山口の監督やGMも歴任した。
「以前は(クラブ経営は)上手くいかないと言われていたが、信念を持って取り組んだことが周りに伝わっていったと思う。衰退は諦めた時点で始まる。これからが大変な時期。身近に感じてもらえるようスタッフとともに日々頑張っていきたい」
河村社長はそう信条を語り、前任者たちに想いを馳せるとともに、重責のなかで前を見つめていた。
来季、チームはJ3からJ2への昇格を目指しながら、ホーム維新陸のさらなる盛り上げも狙っている。「J2への道を描いていかないといけないですが、まずはホームで勝ち、ホームで愛されるチームを作りたい」。平林はそう未来を展望する。
上野監督は「J1を目指すクラブを作りたい」という河村社長の想いにも打たれて就任。山口のJ2、J1へのステップアップに向けて舵取りを図る考えで、すでに「J3の上位4チームに勝たなければいけない。まずは、その態勢を作りたい」と語り、鳥取や町田など上位陣への対策に乗り出している。クラブ予算はJ3のなかでは中堅規模で、選手全員のプロ化は難しい状況だが、それでも河村社長は「少ない予算でもJ2を狙う」と意気込む。
クラブは予算上積みの鍵に「入場者数の増加」を挙げる。すでに多くの入場者数を集めているが、「維新を満員(2万人)にしてみたい」と河村社長。愛されるチーム作りを目指す現場と、二人三脚でさらなる集客力アップを目論んでいる。
県内に高川学園、西京などの名門校を抱え幾多の有名選手を輩出しながら、その受け皿に乏しかった山口県にようやくJリーグチームが誕生した。
「たすきを引き継いで、これからの礎を築いていきたい」(上野監督)
150万県民の誇れるチームへ、維新の胎動期の如く、志士が茨の道を切り開いていく。
取材・文・写真:上田真之介(フリーライター)
「まず宮成さんの顔が浮かびました」
4位以上が確定した栃木ウーヴァ戦。その瞬間に上野監督の脳裏に浮かんだのは、故・宮成隆前GMだった。クラブ創設に尽力し、最初の監督として指揮も執った。上野監督にとって宮成氏は大学時代の先輩。旧知の間柄でもあった。
宮成氏は監督退任後もクラブの顔として引っ張り続けたが、13 年6月、志半ばにして死去。直後の試合となったNTN岡山戦では半旗を掲げ、選手全員が喪章を巻いた。13年から14年でコーチングスタッフと選手は大幅に入れ替わったが、56歳の若さで逝去した故人のチーム愛と山口県初のJリーグチームを作ろうという強い意欲は新体制へと受け継がれていく。「宮成さんが掲げてきた想いに応えられたのかなと」。上野監督にも安堵の表情が浮かんだ。
11月19日の記者会見では、河村社長も「良い報告が宮成さんにできれば」と切り出した。故・宮成氏のほか、佐竹博前代表、株式会社化前の運営法人の山根幹夫理事長などの名前を挙げ、「皆さんがいなければクラブは成り立たなかった」と振り返った。河村社長自身も、サッカー選手としてマツダ、横浜フリューゲルスなどで活躍。現役引退後は山口県内にクラブチームを創設し、山口の監督やGMも歴任した。
「以前は(クラブ経営は)上手くいかないと言われていたが、信念を持って取り組んだことが周りに伝わっていったと思う。衰退は諦めた時点で始まる。これからが大変な時期。身近に感じてもらえるようスタッフとともに日々頑張っていきたい」
河村社長はそう信条を語り、前任者たちに想いを馳せるとともに、重責のなかで前を見つめていた。
来季、チームはJ3からJ2への昇格を目指しながら、ホーム維新陸のさらなる盛り上げも狙っている。「J2への道を描いていかないといけないですが、まずはホームで勝ち、ホームで愛されるチームを作りたい」。平林はそう未来を展望する。
上野監督は「J1を目指すクラブを作りたい」という河村社長の想いにも打たれて就任。山口のJ2、J1へのステップアップに向けて舵取りを図る考えで、すでに「J3の上位4チームに勝たなければいけない。まずは、その態勢を作りたい」と語り、鳥取や町田など上位陣への対策に乗り出している。クラブ予算はJ3のなかでは中堅規模で、選手全員のプロ化は難しい状況だが、それでも河村社長は「少ない予算でもJ2を狙う」と意気込む。
クラブは予算上積みの鍵に「入場者数の増加」を挙げる。すでに多くの入場者数を集めているが、「維新を満員(2万人)にしてみたい」と河村社長。愛されるチーム作りを目指す現場と、二人三脚でさらなる集客力アップを目論んでいる。
県内に高川学園、西京などの名門校を抱え幾多の有名選手を輩出しながら、その受け皿に乏しかった山口県にようやくJリーグチームが誕生した。
「たすきを引き継いで、これからの礎を築いていきたい」(上野監督)
150万県民の誇れるチームへ、維新の胎動期の如く、志士が茨の道を切り開いていく。
取材・文・写真:上田真之介(フリーライター)