もうひとつは、やはりボランチの状況判断とプレーのクオリティによって攻守に切れ目が無くなったことです。

　今日も遠藤選手は変わらず良くて、田中碧選手のプレーも非常に良かったです。ボールを前に奪いに行くところで、ひとりで二つ、三つ守れてしまう。

　相手のドリブルのスピードを抑えながら、パスを出させて、そこに自分で奪いに行く。相手の見えないところからアプローチして、最後コントロールした瞬間にボールを奪ってしまう。

　さらにその奪ったボールをすぐさま攻撃に繋げ、自らもゴール前に入る。実際にボランチがふたりとも前半に惜しいシュートを放っています。そんなボランチふたりの１対１での守備力に加え、技術とセンスと戦術眼を感じました。

　それらに引っ張られるように、周りの選手ものびのびと、いつも通りプレーを出来ていたと思います。上田綺世選手と相馬勇紀選手も、もちろん注目されるべきところだと思いますし、多くの選手が結果を出しました。

　そこでもうひとつ目についたのが、酒井選手のオーバーラップのタイミングです。ここで上がってきていればと思ったタイミングで必ず来ていました。タイミングを読む頭の早さや理解。ボールの予測、それを実行するスプリントの力。見ていて非常に良く、攻撃に厚みも生まれました。

　さらにサイドでも相手に突破を許さず、１対１の強さも感じられました。オーバーエイジの選手をはじめ、海外でプレーする選手が普段肌で感じている部分と言いますか、普段の国内の試合では１対１で間合いを空けて、下がってディフェンスすることも多いですが、そこを下がらずに間合いを詰めに行きますし、相手がちょっとでも後ろを向いたり、ボールを持つ姿勢が悪くなったりすれば、さらに身体を寄せに行く。最後は足だけでなく、太ももとか、お尻とかを当てながらボールを奪う。そんな世界基準のようなものも見せてくれました。
 

　オーバーエイジの選手たちが良さを発揮し、導かれるように五輪世代の選手たちも力を発揮したなか、最終選考まで残り１試合となりました。

　僕の時もトルシエ監督がそうでしたが、今回も森保一監督が五輪世代とA代表の兼任監督。A代表へのアピールにも絶好の機会です。

　オリンピックを経験することで得られるものはとてつもない財産になります。ただ、メンバーに入れなくても、その悔しさが糧となって成長する選手もたくさんいます。

　メンバー選考に関しては難しいですが、監督の頭の中では、決まってきている部分もあれば、まだ何人か迷っていることも絶対にあると思うので、チーム力も上げながら、競争といいますか、選手には思い切ってプレーして欲しいですね。

　もちろん母国開催ですし、東京五輪でプレーしたいという想いも強いと思います。気負う部分も多いし、平常心でやるというのは難しいですが、小さくまとまって欲しくないです。今代表に呼ばれている時点で、実力があって、それぞれ特長もあるということですから。

　次の試合では、まずは日本代表チームとしてどれだけ良い状態で本番を迎えられるかというチームとしてのプレーも見たいですし、選手個々の、楽しい、高い、良いプレーを見せて欲しいですね。

【PHOTO】A代表に続きU-24代表も！『日本代表100周年アニバーサリーユニフォーム』を着用してプレーした選手を一挙紹介！

【PHOTO】圧倒的な存在感を放ったオーバーエイジ組！吉田・酒井・遠藤航をピックアップ！

【著者プロフィール】
明神智和（みょうじん・ともかず）／1978年１月24日、兵庫県出身。シドニー五輪や日韓W杯でも活躍したMF。黄金の中盤を形成したG大阪では2014年の国内３冠をはじめ数々のタイトル獲得に貢献。現在はガンバ大阪ユースコーチとして活躍中。また、「初の著者『徹する力』を２月26日に上梓した。