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【独占ロングインタビュー】酒井高徳が語るシュツットガルトでの3年半|中編 「考えることをやめたら、終わってしまうという覚悟がある」

カテゴリ:ワールド

遠藤孝輔

2015年05月20日

ハリルさんが来たから変わっていくと思う。

日本からメッシは生まれるか――。そんな話題も。 (C) Getty Images

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――そうした考え方に至ったきっかけは?
 
酒井「サポートメンバーとして帯同した南アフリカ・ワールドカップの時ですね。俊さん(中村俊輔)と楢崎さんの練習態度が素晴らしかったんです。大会直前にスタメン落ちを言い渡されたにもかかわらず。
 
 当時19歳だった俺は正直、ふたりが不貞腐れるって思いましたよ。だって、10番が試合に出られないわけです。楢崎さんだって、決して調子が悪いわけじゃなかった。それでも誰よりも声を出して、練習に打ち込んでいました。
 
 主力を相手に『俺らが倒してやる』みたいな気迫で臨んで、これくらいやらないとワールドカップでは勝てないぞって気持ちを伝えていましたね。サポートメンバーの俺に対する要求も凄かったですよ。こうならないといけないって思いましたね。
 
 練習中に『もう十分』という気持ちになるのは絶対にダメ。ただ、頑張るとかちゃんとやるっていうのは、できそうでできないんです。まだ俺は24歳ですけど、それができなくて潰れる選手をたくさん見てきました」
 
河岸「海外で活躍している日本人選手は、みんな考えていると思う。でも、明らかな天才がいるよね。メッシとか。俺はメッシがそこまで考えているとは思えなくて」
 
酒井「そうですね」
 
河岸「あのタイプが、日本サッカー界から生まれると思う? 個人的には、考えなくても済む才能の持ち主は現われないと思う。少なくとも向こう10年は」
 
酒井「メッシって身体がめちゃくちゃ強い。倒れないうえに、速くて、アジリティもある。つまり、サッカー選手に必要なフィジカルを完全に揃えている。
 
 ペップ(グアルディオラ)がバルセロナの監督だった頃はよく走っていたし、運動量がないわけじゃない。いまはそれを求められていないから走らないだけ。その不足分を十分に補うテクニックやゴール嗅覚とか、スプリント能力があるわけだし。だから、あれだけ活躍できるわけですよ。
 
 日本には『メッシが凄い、バルサが凄い』っていう風潮があると思うけど、バルサもメッシもトップでやれるだけの要素を備えているその事実を見逃しがちというか。タカさんの質問に答えるなら、メッシのような技術がある選手は出てくるかもしれないけど、その彼はきっと小柄で線も細くて、体幹も備わっていないと思う。
 
 メッシはバイエルンのボアテングやダンチとも渡り合えるからね。だから、本当の意味でメッシみたいなタイプは、日本から出てこないと思います」
 
河岸「俺が違和感を覚えたのは、日本でようやくインテンシティの重要性を説いているところ。ゴウはドイツに来た時から、インテンシティについて話していたよね」
 
酒井「ハリルさんが来たから、俺は少し変わってくると思っているよ。サッカー協会はその(インテンシブに戦う)考えを持っていたけど、日本サッカー全体はそうじゃなかった。あるいは、伝えられる人がいなかった。
 
 で、ハリルさんはそれが自分の仕事だと思って、ユース年代、Jの下部組織、高校、もちろんトップにも、全員に浸透させようとしている。いいきっかけになると思うし、スタンダードにしなきゃいけないですよ」
 
河岸「俺がすごく問題だと感じているのは、Jリーグ勢がACLで思うように勝てなくなっていること。その原因は相手がガツガツとインテンシブにくる最初の15分で、勝てていないからだと思う。その時間帯を耐えれば、あとはクオリティの差がモノを言ってくる。
 でも、耐えきれないとやられてしまう。そういう部分が日本のクラブには足りない気がする。テクニックとかなら、絶対に日本が上なのに。でも、そうやってガツガツ来られた時に発揮するテクニックという点ではまだ不十分なのかなと」
 
酒井「ないですよ。やっぱり、それ(インテンシブな展開)に慣れていないですから」
 
河岸「もうずいぶん前から変わっていない」
 
酒井「たしかに『戦える』って日本の人たちも言っているんですよ。でも、いざ戦うとなった時、とりあえず走ればいいっていう考え方が多い。不思議なのは走ったり、運動量の多さが戦っているかどうかの物差しになっていることです。
 
 戦うことは身体をコンタクトさせること。バチバチ、怪我するくらいの勢いで。日本にいた頃、スライディングをしてはいけないというトレーニングを経験しました。正直、その意図は分かりませんでした。もっとボディコンタクトが多いサッカーをする必要がありますよ」
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