一方で、中盤や最終ラインでもポジティブな要素は見受けられた。前者は序盤からセカンドボールを拾いつつ前線とのリンクをつなげ、後者は流れのなかからゴールを割らせなかった。中盤の底で“掃除役”を担い、相手CK時は三浦とともに鳥栖の豊田を抑えた守備のキーマン、村松が途中交代したアクシデントを踏まえれば、より彼らの奮闘は際立つ。
 
　２ボランチの一角に入った八反田は「まずはセカンドボールの争いで勝たないといけないと思っていた。でも、前半の途中から上手くいかずに少し相手にペースを握られた。ただし後半は、ちょっとポジションを上げてこぼれ球に反応しやすい位置に行けたことで盛り返せたと思う」と話しており、課題だった修正力も上向きつつあるようだ。
 
　もちろん、勝てなかった事実は重く受けとめるべきだ。リーグ戦での９戦未勝利はクラブワーストタイ記録。開幕戦以来白星のない清水は、依然として有力な“降格候補”である。攻守で良い形が増えてきても、セットプレーからもったいない失点を重ねる悪癖を解消できなければ、今後も勝点を取り逃がすだろう。
 
　10節を終えて勝点７の17位。第１ステージは残り７節だ。残る相手７チームとの昨季対戦成績を眺めれば、昇格組の湘南を除くと２勝３分７敗となる。今後の厳しい戦いは容易に想像がつくだろう。
 
　また、先制されてからの試合運びにも不安は残る。今季の逆転勝利はナビスコカップを含めてゼロ。鳥栖戦は常に先手を取ったため最後まで気落ちせずに戦えていたが、これが逆の立場だったら、鳥栖のように諦めずに同点に追い付けたかどうかは甚だ怪しい。
 
　率直に言って、清水の最大の課題はメンタルだと感じている。常にディテールに気を配り、危機感を持ち、目の前の勝利をどれだけ愚直に追い求められるか。この日かすかに見えた光明を見失わないために、なんとかそこを突き詰めたい。
 
取材・文：増山直樹（サッカーダイジェスト）