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【三浦泰年の情熱地泰】野球とサッカーの差はどこに?「やっと嫌われ者になった工藤監督」の見出しに僕が危機感を持ったワケ

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2020年12月17日

もっと可能性を追求できるスポーツ。それが日本という国でもサッカーなのだと思う

今季限りで引退する中村憲剛。最終戦でもアシストを決め、スタジアムを盛り上げてみせた。(C) SOCCER DIGEST

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 そんななかで最近、現場のマネジメントにも差を感じたことがあった。それはソフトバンクの日本一が決まった翌日のネットニュースだった。

 忙しくさっと目にして中身を読まなかったが、凄い見出しであった。

 ソフトバンク会長、王貞治氏が工藤監督に対して「工藤はやっと嫌われ者になれた」とあった。

 上に立つ、上を目指す人間は嫌われ者になれなければいけない。これは僕の選手時代からのモットーのひとつでもあり、もちろん監督としても今でもいつも感じていることである。

 工藤監督は2軍に落ちていたビッグネームの選手を結局、1軍に上げずに彼は退団の道を選び、工藤監督は日本一に4年連続優勝まで登りつめた。

 つまり、正しく嫌われ者になったのである。勝利するために嫌われ者になれるか?

 ソフトバンクバンクであれば勝ち続けるためであろうし、それが目標達成、ノルマ達成。勝利だけではなく成長の場合も勝利と同じだ。

 サッカーで言うなら、リーグ優勝だけではなく、ACL枠内や昇格、残留などもあるであろう。

 そのようにひとつのものを獲得するためには、嫌われ者になる人間が必要であることを知っている組織だからこそ、野球は12球団、降格がなくてもここまで支えられ、プロスポーツ界を支え続けられて来たのだと思う。

 そうでなければ2シーズン連続、ジァイアンツを4試合で終わらせることなどできる訳がない。資金力を言う人もいるが、ジァイアンツだってあるはずだ。

 立場が上の人間が嫌われたくない。出てこない。部下にやらせる。監督も自身が良いイメージになることだけを考える。周りの人間や若い人間に好かれたいだけで行動を起こしてしまえば……、それでは目標は達成できない。

 野球界とサッカー界の違いはそこにある。プロ野球には長年、日本のスポーツ界を引っ張ってきたプロとしてのプライドを感じる。

 ある番組でプロとアマチュアの違いを指導方針としてもズバリ「プロは違う!」「プロはここが厳しい!」と、プロ野球OBの方が解説者、コメンテーターの立場で言い切った。

 やってきたことの誇り、自信だと思う。

 片や27年間嫌われ者になれないアマチュアから発足したサッカー界。野球との差も開いているのかもしれない。

 内田篤人が海外で経験し、肌で感じたことを「海外との差は開いている」という言葉で率直に語ってくれた。外に目をやるのはとても良いことだが、国内において目の前で行なわれている競技との差も考えなくてはいけない。

 サッカー選手が入団をする時に契約金はない。一方で野球には大きな契約金がある。

 しかしサッカーにはドラフトがない。野球はドラフトがあり、自分の望んでいるチームへ行けるかは分からない。契約金がないけど、好きなチームを選べるサッカー。契約金はあるがドラフトもあり、好きなチームへいけるか分からない野球。どちらにも一長一短があるが、入団の際には様々なドラマを生み出すエンターテイメント性がある。

 一方、日本の国技と言われている相撲はオリンピック競技ではない。そして柔道、体操、水泳、卓球、バトミントン、テニスなどは金メダルを狙えるオリンピック競技だ。ウインタースポーツのフィギュアスケート、スピードスケートなどは世界レベルであり、世界に通用するスポーツ、日本人がトップランナーとなっている競技はサッカー、野球以外にもたくさんある。

 ただし、その競技がエンターテイメントやビジネスとして発展性があるのかはプロスポーツとして大事な要素であり、そうしたスポーツがそれほど多くないのも事実だ。

 サッカーは世界のスポーツだ。それは野球やラグビーより明らかでもある。

 もっと可能性を追求できるスポーツ。それが日本という国でもサッカーなのだと思う。

 ただし、それに胡座をかいていたらいけない。世界ではさらに魅力があり、感情を前面に出せる人と人がしっかり繋がるスポーツである。自分のことしか考えていない人間の集団ではいけない。

 野球界からポツリと発信された「嫌われ者になった、工藤監督」。この言葉に危機感を持った。

2020年12月17日
三浦泰年
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