18歳未満の国際移籍は原則禁止…久保建英と同じ道は歩めない中で「第二の久保」を日本で育むには?

カテゴリ:海外日本人

加部 究

2020年09月17日

世界は科学を味方に効率的なトレーニングや戦術の進化を競い合っている

 例えばイタリア連盟は、国連の通達に即して5~16歳までの少年たちの権利についての規定を明文化し、違反した指導者からはライセンスをはく奪する権利を有している。子供たちは「サッカーを楽しみ」「それぞれのリズムに即したトレーニングに取り組み」「適切な休養を取り」「創造力を活かすためにバリュエーションの豊富な練習内容を提案される」権利を持つと記されているのだ。

 ところが日本ではチーム(学校)の勝利や指導者の名誉がしばしば優先され、選手個々の大切な権利が弾かれてしまっている。その結果、成熟する前にサッカーに嫌気がさす選手たちが後を断たない。根幹をなす「楽しむ」権利が奪われてしまえば、せっかく好きになったサッカーに背を向けるのは当然で、こうして全体のパイが狭まれば逸材が消えていくリスクも高まり、底上げも望めない。皮肉なことに大卒選手が活躍する世界でも稀有な現状を見れば、日本人選手の晩成傾向は顕著なので、それは多くの伸びていくべき芽が途中で刈り取られている証左にもなる。

 一方で久保は一度も学校の先生から高圧的で一方通行の指導を受けたこともなければ、おそらく理不尽な罵声にも遭遇したことがない。疑問があれば理路整然と解消してくれる相手と冷静に会話し、少なくともその点ではストレスなく育ち、だからこそ今でも適切に客観評価が出来ているに違いない。

 遠回りに映るかもしれないが、今JFAが最優先するべきなのは、すべての選手たちに「楽しむ」権利を保証し、その環境を担保することだ。そこを置き去りにして漠然と右肩上がりに見える現状に納得しているようだと、近い将来必ず大きなしっぺ返しが来るし、何よりこの国でせっかくサッカーに魅了された子供たちが不幸になる。世界は科学を味方に効率的なトレーニングや戦術の進化を競い合っている。それに対し試合に出ない選手が溢れ、休養にも故障にも無頓着で何時間も長距離走が続く現状は、まるで竹槍信仰に近い。

 たぶん日本の子供たちの才能が、世界と比べて大きく見劣りすることはない。しかし育っていく環境は、絶望的にかけ離れている。ここで久保に迫る逸材の健やかな成長を望むのは相当に難しい。

文●加部 究(スポーツライター)

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