松井、俊輔らビッグネーム獲得にも少なからず影響
逆に言えば、当時の横浜FCは設立当初の熱気を失いかけていたといってもいいだろう。そして、19年シーズン終盤には、J1昇格が見えていたこともあり、カズが試合に出ていなくとも1万人近い観客がニッパツ三ッ沢に押し寄せる。
また05年以降、クラブハウスや専用練習場の設置(それまでは民間のグラウンドなどを転々としながら練習していた)、戦力補強における資金力の強化など、クラブ自体の体力も改善された。これは厳密に言えばカズ効果ではなく、カズ加入の直前、05年6月に第三者割当増資により筆頭株主となった企業の経営者である小野寺裕司氏(現:横浜FC代表取締役会長CEO)が事実上のオーナーとなったことが背景にある。まさに、横浜FCが「市民クラブ」から脱却し、次のステージを志向し始めた一大転機であったが、サポーターの間でも疑問の声を上げる人は少なくなかった。
一方で、小野寺氏の企業(現在は株式会社LEOC)を親会社とした結果、横浜FCの経営面が安定したという点は否定できない。この辺りの事情に関して、カズの獲得は小野寺氏の強い意向を受けてのことという報道もあり、LEOCの親会社化とカズの加入はほぼ同義と考えていいかもしれない。
カズ加入の翌年の06年シーズン、横浜FCは初のJ1昇格を成し遂げるも、1年でJ2降格が決定する。その後、10年余り迷走し、J1の舞台から遠ざかったこともあって、LEOCの親会社化についてはサポーターの間でも賛否が分かれた。
また05年以降、クラブハウスや専用練習場の設置(それまでは民間のグラウンドなどを転々としながら練習していた)、戦力補強における資金力の強化など、クラブ自体の体力も改善された。これは厳密に言えばカズ効果ではなく、カズ加入の直前、05年6月に第三者割当増資により筆頭株主となった企業の経営者である小野寺裕司氏(現:横浜FC代表取締役会長CEO)が事実上のオーナーとなったことが背景にある。まさに、横浜FCが「市民クラブ」から脱却し、次のステージを志向し始めた一大転機であったが、サポーターの間でも疑問の声を上げる人は少なくなかった。
一方で、小野寺氏の企業(現在は株式会社LEOC)を親会社とした結果、横浜FCの経営面が安定したという点は否定できない。この辺りの事情に関して、カズの獲得は小野寺氏の強い意向を受けてのことという報道もあり、LEOCの親会社化とカズの加入はほぼ同義と考えていいかもしれない。
カズ加入の翌年の06年シーズン、横浜FCは初のJ1昇格を成し遂げるも、1年でJ2降格が決定する。その後、10年余り迷走し、J1の舞台から遠ざかったこともあって、LEOCの親会社化についてはサポーターの間でも賛否が分かれた。
しかしクラブは、大分でナビスコカップ制覇の原動力となったホベルトや、元日本代表の大黒将志、C大阪で実績のあった点取り屋のカイオ、のちにクラブ初のJ2得点王に輝くイバ、かつてのJ1年間MVPのレアンドロ・ドミンゲスなど、J1を本気で目指せるタレントを獲得できるようになってきた。さらに、松井大輔や中村俊輔といったビッグネームの獲得は、カズが横浜FCにいることも少なからず影響していることだろう。
そして、近年のもうひとつの転機と言えるのが、ここ3年余りの強化部門のテコ入れだ。選手の獲得基準をサッカーの技術面に加え、選手のパーソナリティの二面で明文化したことなどは特筆に値する。結果として、確かなスキルと強いメンタルを備える選手のみが集まり、昨季には下平隆宏監督がチームを巧みに率いて、見事に二度目のJ1昇格を果たした。
今、クラブには良い風が吹いている。18年に代表取締役社長COOに就任した、まだ30代半ばの上尾和大氏を現場のトップとする現体制が続く限り、大崩れはなさそうだ。しかし、長年横浜FCを見てきた記者でも、まったく見通しのつかない命題がある――それは、カズがいつ引退するのかということだ。
取材・文●二本木昭
そして、近年のもうひとつの転機と言えるのが、ここ3年余りの強化部門のテコ入れだ。選手の獲得基準をサッカーの技術面に加え、選手のパーソナリティの二面で明文化したことなどは特筆に値する。結果として、確かなスキルと強いメンタルを備える選手のみが集まり、昨季には下平隆宏監督がチームを巧みに率いて、見事に二度目のJ1昇格を果たした。
今、クラブには良い風が吹いている。18年に代表取締役社長COOに就任した、まだ30代半ばの上尾和大氏を現場のトップとする現体制が続く限り、大崩れはなさそうだ。しかし、長年横浜FCを見てきた記者でも、まったく見通しのつかない命題がある――それは、カズがいつ引退するのかということだ。
取材・文●二本木昭