アジアカップ2015

【アジアカップ】多弁だった本田圭佑の真意

カテゴリ:日本代表

西川結城

2015年01月13日

一発を決める自分を追い求めて。

母校・星陵高校が高校選手権初優勝を飾ったこともあり、パレスチナ戦後のミックスゾーンでも上機嫌だった本田。本人は自分が本調子でないことも理解しており、“本当の”勝負どころで一発を決めることを望んでいるに違いない。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 本田が流れのなかで最もゴールに迫ったのは、開始直後だった。左サイドの長友佑都からのクロスを、ゴール前の岡崎慎司が頭でそらす。ファーサイドに流れたボールに飛び込んだのが本田だった。しかし、判定はオフサイドで、シュートも外れた。それ以降、決定的なチャンスはなかった。
 
「ああいうシーンをどれだけ作るかが、今の自分の調子を表わすバロメーター。それがまだ少ないなとは感じている」
 
 そんな本田に、直接聞いてみた。正直、今日のプレーは本調子からはかけ離れているのか、と。すると本田は、『分かってる、分かってる』と心の中でつぶやくかのように、うっすらと笑みを浮かべた。
 
「いや、(自分の調子は)全然でしょ。そのとおりだと思います。コンディションのところですかね。でも、まだ上がっていくなとは思います。これからどんどん、ね」
 
 ダメな自分を認めて受け入れ、それでもなお、自信を見せる。肩に力の入っていないその風情は、ワールドカップ後の本田が見せてきた姿そのものでもあった。
 
 ふと、浮かんだ言葉があった。昨年11月、ミラノの空港で話した際に、本田の口から出てきたセリフだ。
 
「自分は今、“一発”を決められる選手になろうとしている。これまでも、自分は決めるべきところで決めるタイプではあったと思う。でも、ワールドカップのギリシャ戦で、あれだけ攻め込みながら、自分を含めて誰も試合を決められる選手がいなかった。サッカーの勝負を分けるのは、結局はここぞの場面で最後の一発を決められるかどうかだから」
 
 90分間、常にプレーに関与し、試合を構築していく。それが、かつての本田が目指すプレーだった。だが、今は違う。前線で相手を仕留めるために、最終局面に力を注ごうとしている。だからこそ、あえて中盤に引いてゲームメイクを担うようなこともしない。
 
 また、本田は自分が万能な選手でないことも理解している。パスもドリブルもシュートも、パワーもスピードもすべて併せ持つ才子ではない。そんな彼がこれからの“自分作り”で優先するのが、大事な場面で試合を決める選手、チームを勝利に導く一発を決められる選手になることなのである。
 
 パレスチナ戦は、ほぼ困難のない日本の快勝に終わった。自分以上に多くの味方が活躍してくれた。しかし、本田自身が輝く瞬間は、この先にある。難敵を前にした時、チームが窮地に陥った時、勝利をもたらす一発を決める。それこそを本田は求めているのである。
 
「グループ内で最も厳しい相手はイラク。もちろんヨルダン戦も難しい試合になる」
 
 外国人記者の質問に、そう英語で答えた本田。勝負どころは、今ではない。パレスチナ戦の自分に、だから本田は必要以上に悲観していない。
 
取材・文:西川結城
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