好調ブンデスの2クラブがシーズン終了前に監督交代を決断。そのワケは?【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2019年04月06日

現代サッカーはフロント主導ではとん挫してしまう

ラッバディアは昨季は残留争いに巻き込まれていたチームを降格から救った。今季もここまで8位と健闘していたが、契約終了が決定している。 (C) Getty Images

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 かみ合わせの相性の良さも重要だ。どれだけそれぞれが真剣に現場と向き合い、チームの今後について具体的な取り組みを提示することができたとしても、その矢印が違う方向を向いていては、お互いに妥協点を見出すこともできない。

 具体的には、ここ数年残留争いの常連だったヴォルフスブルクは、今年3月に早くも今季限りでブルーノ・ラッバディア監督との契約延長を行わず、共同作業は終わると発表した。

 第27節終了時で勝点42の8位につけており、ヨーロッパリーグ出場権獲得となる6位ブレーメンとの勝ち点差はわずかに2。躍進といっていいほどの好成績だが、ラッバディアとスポーツディレクターのイェルグ・シュマッケの間には、しっかりとしたつながりが生まれることはなかった。シュマッケ自身、「親しい友情関係はない」と語っていたこともある。

 仲が良いからうまくいくというわけではないが、心の底から本気の意見をぶつけ合うためには空気感が必要になる。ラッバディアは「本気の意見交換が行われることが今後も一緒にやっていくために意味があることだ。ただ、100パーセント一緒の方向を向いてやっていけるという実感を持つことができなかった」と心境を明かしている。現場に立つ人間として、その感覚はどうしてもなくてはならないものだから。

 かつて、ドルトムントのミヒャエル・ツォルクSDがこう語っていた。「監督とチームマネージャーと代表取締役。ここのビジョンが一致することがクラブの成功に大事な基盤となる」と。監督任せだけでうまくいくはずはない。首脳陣主導のチーム作りは理想ばかりで、過激なことをするからいつも途中で頓挫してしまう。それぞれの意見と情熱が合致することではじめて、確かな未来を見ることができるのだ。

 いい選手だけでもいい指導者だけでもいいコーチだけではなく、いいスタッフ、いいフロントがそれぞれ適材適所で、そして同じ方向を向いて戦えるかがカギとなる。その点においても、現代サッカーは総力戦といえるだろう。

文:中野 吉之伴

【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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