守備陣では、GKの野崎が昨年の選手権優勝メンバーである高橋昂佑から守護神の座を奪い取った。
「俺が出れば、気持ちで何とかしてやると思っていた。フィールドプレーヤーは走っているので声を出すのはきついと思う。だから、俺は後ろで楽なぶん、みんなのぶんまで声を出すのが仕事」という野崎は、最後尾から声でチームを鼓舞する。
 
　ゆっくりとではあるが、チームは一つひとつ課題を克服し、一枚岩になり始めている。
「戦術理解や各自の目的意識がバラバラだったけど、同じ方向を向き始め、ひとつにまとまってきた」（西村）
 
　残留を目指すチームらしく、第一目標は失点をしないこと。相手の出方をきっちりと見極めながら、最終ラインと中盤の８人が強固なブロックを形成し、集中力と粘り強さを保ちながら、相手の攻撃を撥ね返す。10節の名古屋U18戦で６失点を喫するなど、一度崩れると脆さもあるが、東山戦の失点直後に選手同士で話し合いを行なうなど、改善の意識も向上している。
 
　攻撃では本職はMFながらも、最前線で起用されている坂本裕樹と西村の奮闘が目を惹く。「マークは昨年よりも厳しくなったけど、自由にやらせてもらっているので、やりやすい」という西村の言葉通り、ふたりが阿吽の呼吸でバランス良く前線を動き回り、ドリブルでの仕掛けやシュート、ポストプレーで攻撃を牽引。彼らの特徴を生かすボールが周囲から供給されるようになったのも、話し合いによる改善の結果だ。
 
　残り６試合となったプレミアリーグと、もうすぐ始まる選手権予選で鍵を握ると見られているのが、セカンドチームに落ちた３年生の存在。大塚監督は「彼らがもうひと踏ん張りしてくれれば、チームが切磋琢磨し、さらに良くなると思う」と、チーム作りの最後のスパイスとして上級生の意地に期待を寄せる。
 
　今シーズンは苦しい時期が続いたが、大塚監督は「今年は一つひとつ課題を潰していくやり方が最適だと思っていた。仕上がりは遅いかもしれないけど、選手権に向けて徐々に良くなってきたし、最終的には昨年に近いところまでチームは仕上がると思う」と手応えを口にする。最終コーナーが見え始めたプレミアリーグWESTだが、調子を上げ始めた富山一は目の離せない存在になりそうだ。
 
取材・文：森田将義（フリーライター）

【U-18プレミアphoto】12節［WEST］東山 対 富山一