1年越しのリベンジ、尚志らしさを支えた3年生
青森山田PK5人目のキッカーがネットを揺らした瞬間、FW伊藤綾汰は埼玉スタジアム2002のピッチに崩れ落ちた。敗退が決まり、涙を抑えきれなかった。
この試合で今大会初の先発出場となった3年生FW伊藤は、万全なスタートを切れたわけではなかった。12月に入って虫垂炎を患い、中旬まで入院。その後に練習に参加し、12月31日の選手権が復帰戦だった。
そんな状態でも準々決勝までの4試合すべてに途中出場し、鋭い攻め上がりと緩急をつけるプレーでチームの勝利に貢献。1回戦では先制ゴールも決めた。準々決勝から1週間開いた準決勝で念願の先発を果たした伊藤は、染野、加瀬との流れるような連係で「イメージを共有できた」と手応えのある3点目の染野のゴールを演出した。
試合後は「負けたけど、楽しかった。尚志らしいサッカーができたと思う」と笑顔も見せた。
PK戦後に崩れ落ちた伊藤を助け起こした青森山田の檀崎竜孔とは、小学生時代にベガルタ仙台ジュニアチームでの同僚。試合後に言葉を交わした。「泣いててあんまり覚えてないんですけど(笑)優勝しろよとか、そういうことを」。そのエールを受け取った檀崎は、決勝で2ゴールをあげ、優勝を手にしている。
「大舞台で決めきる決定力をつけたい。それが(檀崎との)差だと思う」と表情を引き締めた伊藤は、法政大へ進学。サッカーを続け、更なる上を目指す。
この試合で今大会初の先発出場となった3年生FW伊藤は、万全なスタートを切れたわけではなかった。12月に入って虫垂炎を患い、中旬まで入院。その後に練習に参加し、12月31日の選手権が復帰戦だった。
そんな状態でも準々決勝までの4試合すべてに途中出場し、鋭い攻め上がりと緩急をつけるプレーでチームの勝利に貢献。1回戦では先制ゴールも決めた。準々決勝から1週間開いた準決勝で念願の先発を果たした伊藤は、染野、加瀬との流れるような連係で「イメージを共有できた」と手応えのある3点目の染野のゴールを演出した。
試合後は「負けたけど、楽しかった。尚志らしいサッカーができたと思う」と笑顔も見せた。
PK戦後に崩れ落ちた伊藤を助け起こした青森山田の檀崎竜孔とは、小学生時代にベガルタ仙台ジュニアチームでの同僚。試合後に言葉を交わした。「泣いててあんまり覚えてないんですけど(笑)優勝しろよとか、そういうことを」。そのエールを受け取った檀崎は、決勝で2ゴールをあげ、優勝を手にしている。
「大舞台で決めきる決定力をつけたい。それが(檀崎との)差だと思う」と表情を引き締めた伊藤は、法政大へ進学。サッカーを続け、更なる上を目指す。
一方で、"表舞台"を去る者もいる。
決勝後、全国高体連サッカー部技術委員会が発表した優秀選手38人のうち、尚志からは、FW伊藤のほか、DFフォファナ・マリック、MF坂下健将、FW染野唯月の4名が選出された。
MFで唯一選出された坂下は、中盤でパスサッカーの真髄を体現し続けた、尚志らしいサッカーの“核”だった。仲村監督が「坂下を経由しなければうちは何も始まらない」とまで言わしめた広い視野で試合をコントロール。サイドにさばいたパスや裏を狙った前線へのスルーパスで、幾度となく決定的なシーンを演出した。
決して身長は高くないが、巧みなテクニックで敵をかわし、抜群のボディバランスで大型選手相手でも球際で競り負けない。最後まで常にハイプレスで相手のパスコースを消し、奪ったボールをいち早く前へ運んでチームを推進力となった。
最も印象的だったのは3回戦の前橋育英戦。10番のエース高橋尚紀を「徹底的にチェックしにいった」と語った、攻守に身を捧げるプレーは気迫に溢れていた。
5試合すべてに先発した坂下は、準決勝後、「(大舞台に)ちょっと緊張はしましたけど、やり切った。悔しさはあるけど、悔いはありません」と語った。目にはまだ少し涙がにじんでいたが、彼はこの大会を最後に、選手としての生活に終止符を打つことを決めているという。坂下が今大会で全身全霊を捧げたチームへの貢献は、誰もが認めるところだろう。
“尚志のサッカー”を支え続けた3年生はそれぞれ、新たな道へと進む。試合に出なかった選手も含め、快進撃に貢献した選手たちの名前を挙げればきりがないが、把握している限りでは、準決勝で素晴らしいアシストをした加瀬は大学でサッカーを続けてゆくゆくはプロへ。沼田も大学でサッカーを続ける。黒澤は教師を目指すそうだ。「来年こそ全国優勝を」と新たなリベンジを誓った染野ら、残された後輩たちは、今季プレミアリーグで青森山田との再戦も控えている。
次世代が紡ぐ尚志らしいサッカーは、果たしてどこまで突き進むのだろうか。
取材・文●熊介子(サッカーダイジェストWeb編集部)