プレシーズンマッチ8試合で5得点・2アシストと確かな手応え。
FWとしては、例えば柿谷曜一朗や大迫勇也のように、卓越したボールコントロールを誇る選手ではない。むしろ、テクニックもスピードもパワーも「並」。国内では十分な威力を発揮した181センチの高さも、海を渡れば平凡でしかない。それでも田中の名前が海の外にまで届いた理由は、おそらくゴールまで30メートル以内の距離ならワンステップでも射程圏内に入る、絶対的な強度と精度を誇る左足にある。
柏のDF近藤直也は言う。
「単独での突破力はない。ただ、良いパスを受けて、アイツの形でトラップできれば、間違いなくシュートでアピールできる。だから、移籍先が強いチームで良かったと思いますよ。守備主体のチームでカウンターを期待されると厳しいけど、能力の高いチームメイトから良いパスさえ出てくれば、十分に勝負できる」
合流直後から続いたプレシーズンマッチでは、まさに近藤が言う理想的な環境がプラスに作用した。
8月9日までにこなした8試合の成績は、5得点・2アシスト。スタメン出場は2試合に止まったが、今夏から指揮を執るマルコ・シウバ監督がその他の6試合でも途中出場させているように、現時点での期待感は十分に伝わってくる。なにより、「8試合で5得点」のインパクトは強い。たとえチームメイトの「崩し」にお膳立てされたイージーなゴールが多かったとしても。
ただし、基本システムを4-3-3とするスポルティングで定位置を掴むのは容易ではない。シウバ監督はCFでの起用を視野に入れているようだが、このポジションでは昨シーズンに12得点を記録したコロンビア人FWのフレディ・モンテーロが不動の地位を築いている。二番手の座を争うのはイスラム・スリマニ。移籍が噂されるこのアルジェリア代表FWの去就は不透明だが、仮に彼を放出する運びとなっても新戦力が加入する可能性は高く、このポジションでの勝負はハードルが高い。
そこで期待されるのは、3トップの両サイドでの起用である。左のディエゴ・カペル、右のアンドレ・カリージョとも突破力に優れたアタッカーだが、決定力には不満が残る。左サイドからの精度の高いアーリークロス、さらに右サイドから中央に切れ込んでの強烈なシュートという田中の武器は、チームにとって貴重なアクセントとなりうる。
3つのポジションで違った働きができる田中は、指揮官にとっても間違いなく有意義な存在だ。もちろん、守備戦術の早期体得が条件となるが、もともと戦術理解力に優れ、献身性は高い。欧州で活躍する他の日本人選手と同様に、日本人らしい真面目さと柔軟性を買われて重用される可能性は大いにある。
どうやら本人も、確かな手応えを感じているようだ。一時帰国した際、柏のDF渡部博文にこう話している。
「ストロングポイントを発揮できているし、自信を持ってやれていると言っていました。DFの当たりの強さが日本とは違い、戸惑う部分もあったみたいだけど、順也は本能で感じてうまく対応できるタイプ。だから、問題はないと思います」
柏のDF近藤直也は言う。
「単独での突破力はない。ただ、良いパスを受けて、アイツの形でトラップできれば、間違いなくシュートでアピールできる。だから、移籍先が強いチームで良かったと思いますよ。守備主体のチームでカウンターを期待されると厳しいけど、能力の高いチームメイトから良いパスさえ出てくれば、十分に勝負できる」
合流直後から続いたプレシーズンマッチでは、まさに近藤が言う理想的な環境がプラスに作用した。
8月9日までにこなした8試合の成績は、5得点・2アシスト。スタメン出場は2試合に止まったが、今夏から指揮を執るマルコ・シウバ監督がその他の6試合でも途中出場させているように、現時点での期待感は十分に伝わってくる。なにより、「8試合で5得点」のインパクトは強い。たとえチームメイトの「崩し」にお膳立てされたイージーなゴールが多かったとしても。
ただし、基本システムを4-3-3とするスポルティングで定位置を掴むのは容易ではない。シウバ監督はCFでの起用を視野に入れているようだが、このポジションでは昨シーズンに12得点を記録したコロンビア人FWのフレディ・モンテーロが不動の地位を築いている。二番手の座を争うのはイスラム・スリマニ。移籍が噂されるこのアルジェリア代表FWの去就は不透明だが、仮に彼を放出する運びとなっても新戦力が加入する可能性は高く、このポジションでの勝負はハードルが高い。
そこで期待されるのは、3トップの両サイドでの起用である。左のディエゴ・カペル、右のアンドレ・カリージョとも突破力に優れたアタッカーだが、決定力には不満が残る。左サイドからの精度の高いアーリークロス、さらに右サイドから中央に切れ込んでの強烈なシュートという田中の武器は、チームにとって貴重なアクセントとなりうる。
3つのポジションで違った働きができる田中は、指揮官にとっても間違いなく有意義な存在だ。もちろん、守備戦術の早期体得が条件となるが、もともと戦術理解力に優れ、献身性は高い。欧州で活躍する他の日本人選手と同様に、日本人らしい真面目さと柔軟性を買われて重用される可能性は大いにある。
どうやら本人も、確かな手応えを感じているようだ。一時帰国した際、柏のDF渡部博文にこう話している。
「ストロングポイントを発揮できているし、自信を持ってやれていると言っていました。DFの当たりの強さが日本とは違い、戸惑う部分もあったみたいだけど、順也は本能で感じてうまく対応できるタイプ。だから、問題はないと思います」
柏の強化部門のディレクターを務める吉田達磨も、田中の能力に太鼓判を押す。
「正式なオファーとしては突然でしたが、本人はもともと(海外に)行きたかっただろうし、方向性は定まっていたんだと思います。能力的にも性格的にも、まったく問題はないと思いますね。左足はプロの世界でもトップレベル。順也は順也が好きだから(笑)、そういう性格も海外で勝負する上ではプラスですよね」
世界的にはまったく無名の選手が欧州屈指の名門で挑戦するのだから、成功を手にするのは簡単ではない。チームは今夏の移籍市場でマンチェスター・ユナイテッドからポルトガル代表FWのナニを獲得し、レギュラー争いはさらに激しさを増した。ただし、彼には左足という特別な武器があり、加えてスポルティングには、現時点で理想的と言える環境が整っている。
「ところで、タナカって誰?」
その答えを、自らの力で示す可能性は十分にある。
文:細江克弥(フリーライター)
※『ワールドサッカーダイジェスト』2014年9月4日号より
「正式なオファーとしては突然でしたが、本人はもともと(海外に)行きたかっただろうし、方向性は定まっていたんだと思います。能力的にも性格的にも、まったく問題はないと思いますね。左足はプロの世界でもトップレベル。順也は順也が好きだから(笑)、そういう性格も海外で勝負する上ではプラスですよね」
世界的にはまったく無名の選手が欧州屈指の名門で挑戦するのだから、成功を手にするのは簡単ではない。チームは今夏の移籍市場でマンチェスター・ユナイテッドからポルトガル代表FWのナニを獲得し、レギュラー争いはさらに激しさを増した。ただし、彼には左足という特別な武器があり、加えてスポルティングには、現時点で理想的と言える環境が整っている。
「ところで、タナカって誰?」
その答えを、自らの力で示す可能性は十分にある。
文:細江克弥(フリーライター)
※『ワールドサッカーダイジェスト』2014年9月4日号より