監督の立場で日本代表の話を鹿児島の人たちと話せることは喜ぶべきこと
鹿児島での出来事をもうひとつ。
鹿児島は温泉協会に加盟している所は、すべて390円で素晴らしい湯が堪能できる。都会の人が聞けばびっくりする値段だが、鹿児島の人が東京のスーパー銭湯の値段を聞いたらもっと驚くだろう。
練習後、そんな温泉の露天風呂で話しかけられた。週に一度、行きつけの温泉で友人とも言える間柄になってしまう人生の大先輩たちがいるのだが、その人には初めて声をかけられた。もちろん、ユナイテッドの状況がきっかけなのだが、ワールドカップの日本代表には大きな関心を持っている。
そのお父さんから受けたのは、「可能性のなくなったポーランド代表との試合はどうなるのですか?」という単刀直入な質問だ。
敗退が決まったポーランド代表なら大丈夫なのか? プロの人間の意見を聞かせてほしいというのだ。
僕は一般人に分かりやすい「リバウドメンタリティー=こんちくしょう根性」がポーランド人にあれば、試合は簡単ではないと説明した。その年代の人たちは、このリバウドメンタリティーをもって鉄人時代を生きてきているはずだ。
ポーランド人の資質、性格は分からないが、プロの選手であれば間違いなく、より強い気持ちで望んでくると。
結果、戦術的にはFIFAランキング8位に値するパフォーマンスではなかったが、日本代表を最後まで苦しめた結果は、皆さんご存知の通りである。
そして鹿児島出身、大迫の話になり、彼のような選手は育てられるものではない逸材であり、教えられないものがあるという話に。
定年まで勤め上げたお父さんは、我々、企業の世界も同じだと言っていた。ソフトバンクの先駆者、孫さんや大きな企業のトップが抱えている悩みは、自分の後見者が育たない、ということらしい。
いや育てられない、とその方は、サッカーの世界と自分の世界を照らし合わせていた。先駆者を超える人間は育てられるものではないと呟いていた。
ワールドカップの存在価値――。
こうやって鹿児島の露天風呂で、サッカーの話が出来る。日本にも少しずつそういう文化が出来つつあるのだろう。
嬉しい話だし、ワールドカップに、そして頑張った日本代表に感謝だ。
最後にポーランド戦を多くの人にどう感じたか聞かれ、ベルギー戦の最後のプレーや選手についてもよく聞かれる。
ポーランド戦とは日本代表の残り何分かのプレーのことであり、ベルギー戦は2−0のリードを守りきれなかった理由。最後のCKをどうすれば良かったのか?
皆、興味は深い。
僕はサッカー解説者でもなく、評論家でもない。テレビでの予想や結果に対して、国民に何か答えのようなものを伝える立場ではない。
カテゴリーは違えども、西野監督と同じ立場のプロの監督なのだ。
そして日本代表のスタッフではないので、それを応援するサポーターの一人なのだ。
勝利すれば嬉しく、負ければ悔しい。感情を意のままに、一喜一憂が許される。
しかし鹿児島の監督としては違う。一戦一戦、結果だけでなく内容も問われ、すべての選手をマネージメントしなければならず、一瞬も油断は許されない。一喜一憂してはならない立場なのだ。
そんな僕が監督の立場で日本代表の話を鹿児島の人たちと話せることは喜ぶべきことだ。解説者やコメンテーターの立場だと、サポーターやファンと接するようなわけにはいかない。応援団ではいけない。目の前で起きている状況をしっかり伝えるのが仕事だ。しかしそれは至難の業であり、非常に難しい。
そして周りに何百倍の気を遣い、人の何百倍もストレスを感じているであろう日本代表監督のことを、どうコメントすれば良いのであろう……。
想像がつかない。
今夜もベスト8(準々決勝)の戦いが、2試合行なわれる。
楽しみな夜だ……。
2018年7月7日
三浦泰年
鹿児島は温泉協会に加盟している所は、すべて390円で素晴らしい湯が堪能できる。都会の人が聞けばびっくりする値段だが、鹿児島の人が東京のスーパー銭湯の値段を聞いたらもっと驚くだろう。
練習後、そんな温泉の露天風呂で話しかけられた。週に一度、行きつけの温泉で友人とも言える間柄になってしまう人生の大先輩たちがいるのだが、その人には初めて声をかけられた。もちろん、ユナイテッドの状況がきっかけなのだが、ワールドカップの日本代表には大きな関心を持っている。
そのお父さんから受けたのは、「可能性のなくなったポーランド代表との試合はどうなるのですか?」という単刀直入な質問だ。
敗退が決まったポーランド代表なら大丈夫なのか? プロの人間の意見を聞かせてほしいというのだ。
僕は一般人に分かりやすい「リバウドメンタリティー=こんちくしょう根性」がポーランド人にあれば、試合は簡単ではないと説明した。その年代の人たちは、このリバウドメンタリティーをもって鉄人時代を生きてきているはずだ。
ポーランド人の資質、性格は分からないが、プロの選手であれば間違いなく、より強い気持ちで望んでくると。
結果、戦術的にはFIFAランキング8位に値するパフォーマンスではなかったが、日本代表を最後まで苦しめた結果は、皆さんご存知の通りである。
そして鹿児島出身、大迫の話になり、彼のような選手は育てられるものではない逸材であり、教えられないものがあるという話に。
定年まで勤め上げたお父さんは、我々、企業の世界も同じだと言っていた。ソフトバンクの先駆者、孫さんや大きな企業のトップが抱えている悩みは、自分の後見者が育たない、ということらしい。
いや育てられない、とその方は、サッカーの世界と自分の世界を照らし合わせていた。先駆者を超える人間は育てられるものではないと呟いていた。
ワールドカップの存在価値――。
こうやって鹿児島の露天風呂で、サッカーの話が出来る。日本にも少しずつそういう文化が出来つつあるのだろう。
嬉しい話だし、ワールドカップに、そして頑張った日本代表に感謝だ。
最後にポーランド戦を多くの人にどう感じたか聞かれ、ベルギー戦の最後のプレーや選手についてもよく聞かれる。
ポーランド戦とは日本代表の残り何分かのプレーのことであり、ベルギー戦は2−0のリードを守りきれなかった理由。最後のCKをどうすれば良かったのか?
皆、興味は深い。
僕はサッカー解説者でもなく、評論家でもない。テレビでの予想や結果に対して、国民に何か答えのようなものを伝える立場ではない。
カテゴリーは違えども、西野監督と同じ立場のプロの監督なのだ。
そして日本代表のスタッフではないので、それを応援するサポーターの一人なのだ。
勝利すれば嬉しく、負ければ悔しい。感情を意のままに、一喜一憂が許される。
しかし鹿児島の監督としては違う。一戦一戦、結果だけでなく内容も問われ、すべての選手をマネージメントしなければならず、一瞬も油断は許されない。一喜一憂してはならない立場なのだ。
そんな僕が監督の立場で日本代表の話を鹿児島の人たちと話せることは喜ぶべきことだ。解説者やコメンテーターの立場だと、サポーターやファンと接するようなわけにはいかない。応援団ではいけない。目の前で起きている状況をしっかり伝えるのが仕事だ。しかしそれは至難の業であり、非常に難しい。
そして周りに何百倍の気を遣い、人の何百倍もストレスを感じているであろう日本代表監督のことを、どうコメントすれば良いのであろう……。
想像がつかない。
今夜もベスト8(準々決勝)の戦いが、2試合行なわれる。
楽しみな夜だ……。
2018年7月7日
三浦泰年