これだけアーセナル愛が強いのであれば、退任後にそのまま引退することも考えられるが、これについて本人は、「そうかもしれないし、分からない。私にとって新しいことだからね」と複雑な胸中をうかがわせた。

「正直、あまり答えられない。半年後に嘘つきと言われたくないからね。そのときの状況にどう応じるかは分からないよ」
 

　ひとつ確かなのは、フランス人のヴェンゲル監督が、「イングランド・サッカーからの賛辞のすべてに感動したし、この国でそういう経験ができて感謝している」ということだ。

「イングランドにおいてサッカーは特別なものであり、この国のファンには特別な情熱がある。それは他のどの国でも見つからないだろう。プレミアリーグの20年の成長を見ることができたのは、私にとって特別な経験だった。今後もずっと発展が続くことを願っている」

　またヴェンゲル監督は、「少し葬式みたいに感じている。みんなが自分について、どんな人間で、どんな監督だったかと懐かしむように話しているからね。これだけ語ってもらえたら、私はもう死ぬ必要がなさそうだ（笑）」などと冗談を交えつつ、感謝の言葉を続けた。

「私に良くしてくれたすべての人に感謝する。賛辞も批判も、それらが自分に値する以上のものだったこともあった。大変だったけど、ファンタスティックだったよ」

　アーセナルはヨーロッパリーグ（EL）で勝ち進んでおり、次の準決勝ではアトレティコ・マドリーと対戦する（第１レグ：４月26日、第２レグ：５月３日）。ヴェンゲル監督は有終の美を飾るべく、チャンピオンズ・リーグ出場権が得られるEL制覇に集中していることだろう。そしてその後、どのような道に進むのか。名将の決断が待たれる。