だが、連れてきたから使っているのではなく、試合が終わるとスタメン選びは仕切り直し。必然的に競争がヒートアップし、紅白戦は公式戦と同等かそれ以上のパフォーマンスが見られる。霜田監督も「（スタメンとベンチの）18人を選ぶのが段々と難しくなってきた」と嬉しい悲鳴だ。
 
　こうしたなか、既存戦力も奮起している。新戦力にポジションを渡すまいという意識も強いが、彼らは昨年、ふたりの監督が事実上解任されるなど不本意なシーズンを過ごした。それだけに活躍する姿で恩に報いたり、下位に沈んだ悔しさを晴らしたいという想いも抱く。
 
　あうんの呼吸でプレーできる三幸秀稔、前貴之、小野瀬康介のトリオは多少のポジション変更はあったものの、同時にピッチに立って右から崩しに掛かる。また前線に上がっていく機会の多い３選手の脇や背後で、佐藤健太郎が落ち着いてスペースをケアする。指揮官が替わるなかでも培ってきた良好なコンビネーションと、辛酸をともにしたがゆえの強靱な闘争心がとりわけ右サイドの攻守で生き、いくつかの得点にも結びついている。

　これら３つに加え、もう一点付け加えなければならないのは、プレシーズンマッチでＪ１の広島と対戦したことだ。Ｊ１チームを苦しめる時間帯は確かにあったが、相手はミスを逃さず、背後のスペースも容易に突いた。「通用する部分と、通用しない部分がはっきりした。自分たちのパスミスから失点しないよう、意識して取り組まないといけない」（三幸）と危機感を抱き、慢心なくシーズンを迎えられたことも、開幕ダッシュにつながったポイントと言えそうだ。
 
　霜田監督が落とし込む戦術を新戦力と既存戦力がそれぞれのポジションで表現しようとしてきている。勝っているからこそかもしれないが、思い切りよくシュートに行くことで生まれたゴールもある。ただ、霜田監督は「やらなければいけないことがまだまだ山ほどある」ときっぱり。波に乗るチームの勢いをうまくコントロールして、常勝のチームを作っていく。
 
取材・文●上田真之介（フリーライター）