18歳で父親になったことも精神的に成熟するきっかけに。
ドリブル、パス、シュートと基本技術の水準が総じて高く、ボール扱いには一切の無駄がない。同じPSVの先達アリエン・ロッベン(現バイエルン)と比較する声もあるが、そのプレースタイルはもっと直線的だ。
ウイングにしてはボールタッチが少なく、鋭い裏への抜け出しやシンプルなワンツーでサイドを突破する。短距離走者のように瞬時に最高速度に到達し、一度スピードに乗ったら止めるのは至難の業だ。
性格は陽気で、誰に対してもオープン。練習には人一倍熱心に取り込む努力家であり、学習意欲も旺盛だ。こうした資質の持ち主だからこそ、チームに瞬く間に順応できたのだ。
PSVがこのメキシコ産のウイングに目をつけたのは、2012年頃。スカウトのデニー・スプロンクが、当時パチューカの下部組織でコーチを務めていたオランダ人のワウト・ウェスターホフからロサーノを紹介されたのだ。
ウェスターホフがロサーノに惚れ込んだのは、単に優れたフットボーラーだったからだけではない。どんなに厳しいトレーニングにも音を上げず、試合でも常に全力を尽くすそのメンタリティーを何よりも高く買っていたのだ。18歳で父親になったことも、精神的に成熟するきっかけになった。
パチューカでは18歳でトップデビューを飾り、2年目の2014-15シーズンからレギュラーに定着。メキシコ代表では16年2月に初キャップを刻み、同年8月のリオ五輪にも出場した。
欧州の複数のクラブから注目を浴びた17年夏、ロサーノにはPSV以外の選択肢もあった。当初パチューカは最も高額な移籍金を用意したセルタとの交渉を進めていたものの、本人の強い希望によりPSVへの移籍が決まった。
契約期間は23年6月までだが、ここまでのプレーを見る限り、PSVに長く留まるとは思えない。多くの先達と同じように、このクラブをステップボードにそう遠くないうちに欧州のトップリーグへと羽ばたいていくはずだ。過去の例でいえば、ロマーリオ(バルセロナへ)は5シーズン、ルート・ファン・ニステルローイ(マンチェスター・Uへ)は3シーズン在籍したが、その期間はもっと短くなるに違いない。
いくつかのメガクラブは、すでにロサーノ獲得に向けて動き出している。アーセナルは頻繁にスカウトを送り込み、17年夏も移籍先のひとつに挙がっていたマンチェスター・Uも引き続きその動向を追っている。
このままのハイパフォーマンスが続けば、今シーズン終了後の激しい争奪戦は必至だろう。上昇志向の強い本人もそれを望んでいるはずだ。
彗星のように現われ、彗星のように去っていく――。PSVのファンにとって、ロサーノはそんな存在になるはずだ。
文:ハンス・フォス
【著者プロフィール】
ハンス・フォス/『ユトレヒト・ニュースブラッド』紙、オランダの地方紙にニュースを提供する通信社『ネーデルラント・プレス』の記者を経て、2006年からフリー。現在は、オランダ中部を拠点とする総合メディア『BDUメディア』を中心に、精力的な執筆活動を展開する。1959年1月1日生まれ。
※ワールドサッカーダイジェスト2018.1.18号より加筆・修正
ウイングにしてはボールタッチが少なく、鋭い裏への抜け出しやシンプルなワンツーでサイドを突破する。短距離走者のように瞬時に最高速度に到達し、一度スピードに乗ったら止めるのは至難の業だ。
性格は陽気で、誰に対してもオープン。練習には人一倍熱心に取り込む努力家であり、学習意欲も旺盛だ。こうした資質の持ち主だからこそ、チームに瞬く間に順応できたのだ。
PSVがこのメキシコ産のウイングに目をつけたのは、2012年頃。スカウトのデニー・スプロンクが、当時パチューカの下部組織でコーチを務めていたオランダ人のワウト・ウェスターホフからロサーノを紹介されたのだ。
ウェスターホフがロサーノに惚れ込んだのは、単に優れたフットボーラーだったからだけではない。どんなに厳しいトレーニングにも音を上げず、試合でも常に全力を尽くすそのメンタリティーを何よりも高く買っていたのだ。18歳で父親になったことも、精神的に成熟するきっかけになった。
パチューカでは18歳でトップデビューを飾り、2年目の2014-15シーズンからレギュラーに定着。メキシコ代表では16年2月に初キャップを刻み、同年8月のリオ五輪にも出場した。
欧州の複数のクラブから注目を浴びた17年夏、ロサーノにはPSV以外の選択肢もあった。当初パチューカは最も高額な移籍金を用意したセルタとの交渉を進めていたものの、本人の強い希望によりPSVへの移籍が決まった。
契約期間は23年6月までだが、ここまでのプレーを見る限り、PSVに長く留まるとは思えない。多くの先達と同じように、このクラブをステップボードにそう遠くないうちに欧州のトップリーグへと羽ばたいていくはずだ。過去の例でいえば、ロマーリオ(バルセロナへ)は5シーズン、ルート・ファン・ニステルローイ(マンチェスター・Uへ)は3シーズン在籍したが、その期間はもっと短くなるに違いない。
いくつかのメガクラブは、すでにロサーノ獲得に向けて動き出している。アーセナルは頻繁にスカウトを送り込み、17年夏も移籍先のひとつに挙がっていたマンチェスター・Uも引き続きその動向を追っている。
このままのハイパフォーマンスが続けば、今シーズン終了後の激しい争奪戦は必至だろう。上昇志向の強い本人もそれを望んでいるはずだ。
彗星のように現われ、彗星のように去っていく――。PSVのファンにとって、ロサーノはそんな存在になるはずだ。
文:ハンス・フォス
【著者プロフィール】
ハンス・フォス/『ユトレヒト・ニュースブラッド』紙、オランダの地方紙にニュースを提供する通信社『ネーデルラント・プレス』の記者を経て、2006年からフリー。現在は、オランダ中部を拠点とする総合メディア『BDUメディア』を中心に、精力的な執筆活動を展開する。1959年1月1日生まれ。
※ワールドサッカーダイジェスト2018.1.18号より加筆・修正