【現地発】U-17W杯も制覇のイングランド。育成改革の次なるステップは?

カテゴリ:ワールド

山中忍

2017年10月31日

今のイングランドの若手に求められることは?

チームの主軸を担ったフォデン(左)とブリュースター(右)。いずれも所属クラブのトップチームではコンスタントな出場機会は得られていない。 (C) Getty Images

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 彼らに対する所属クラブの評価はどうなのか?
 
 8ゴールを挙げて大会得点王となったリアン・ブリュースターは、所属するリバプールでユルゲン・クロップ監督から主に練習試合で起用されている。そして決勝で2得点を挙げて大会MVPに輝いたフィル・フォデンについても、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は「すぐに同じポジションで使う」と冗談交じりに讃えている。
 
 だが、その大半がメガクラブに在籍する彼らの出場機会が突然、増えるはずなどない。
 
 最多の5人をU-17ワールドカップ決勝のピッチに送り出したチェルシーのアントニオ・コンテ監督は、「イングランドの将来は明るい」と発言しながらも、「17歳のルーニーぐらいの力があれば使う」として、トップチームの門戸の狭さを明確に示していた。
 
 イタリア人指揮官の言葉が表す通り、即座の結果を求めるフロントから受けるプレッシャーの大きさが、監督たちの指導熱の高さを上回るプレミアリーグ、とくにメガクラブでは、余程の実力者でなければ、10代の青二才が出場機会を得られる保証はない。
 
 そこで、若手にも姿勢の変化が求められている。使われないことを受け身になって、単なる犠牲者となるのではなく、能動的に使われる環境に身を置く行動者になるべきなのだ。
 
 若手がプロキャリアの入り口で選択すべきは、ビッグクラブの富と名声ではなく、トップチームでの出場時間を得られるクラブだ。プレミアリーグの監督たちにも若手を使う勇気が必要なのは確かだが、今のユース上がりのヤングスターたちには、表面的なステータスを下げてでも、実質的なキャリアアップを目指す勇気が欲しい。
 
 同時にメディアを含む国民にも、敢えてプレミアの外に出る決断を理解して見守ることが求められている。従来のように下部リーグや他国リーグへと移籍する若手を「都落ち」と眺めるような目で見送ってはならないのだ。
 
 近い将来、インドで輝いた「セント・ジョージズ・パーク世代」を「新・黄金世代」と呼べるようになるためにも――。
 
文:山中忍
 
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
 
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